秘 書 の 遍 歴 -< 3 >
( 社長のオンナ)
午前中に台湾空港に着いて、迎えに来ていた通訳の方と相手のオフィスを訪問しました。
午後から工場などを見まして、夜は台北のホテルへ入りました。
秘書の私が予約を入れたホテルです。
私はシングルルームを2部屋と言って申し込みをした積りなのですが、如何した手違いか2人
1室のお部屋でした。
「どうした・・?2人で1部屋だって、構わないよ・・」
ホテルのフロントに文句を言おうとしていると、傍に立っていた社長がおっしゃるのです。
社長がそうおっしゃるならば、私は逆らえません。
それに・・何とは無く、お部屋の中にはベッドが2つ並んで置かれているツインのお部屋を
想像していたのです。
カードキイーを2枚持ってお部屋に向かいました。
最上階でエレベーターを降りまして、社長と私はお部屋に入りました。
お部屋は豪華の一言です。室内の調度品も高級なもののようです。
分厚いカーテンを開くと、台北の素晴らしい夕闇の風景が広がっていました。
ところが。。です。ベッドは4人が寝られるのじゃないかと思われるほどのベッドなんですが、
1つしかありません。しかも・・ピンクのベッドカバーが掛かっています。
「スミマセン!何かの手違いで・・お部屋を取り直して参ります・・」
出張の時には何時も持ち歩いている鞄を置くなり、蒼くなった私は内線電話のところに駆け
寄りました。
会社では「社長は女好きなのだ・・」ともっぱらの噂がありました。
女好きの社長が30を超えた男の私と同じベッドで同衾するはずはありません。
「構わない・・と言っただろう・・?それにこんなに眺めがいいんだ!こっちは来て・・
台北の夜景でも見ると・・いい!」
窓際に立って暮れ行く台北の夜景を見ながら、電話を取り上げた私におっしゃるのです。
そのおっしゃりかたは、普段私のドジを咎めるおっしゃりかたとは違っていまして、優しい
ものでした。
今になりまして考えますと・・
社長は私をご自分のオンナにする目的で、私の予約をしました2部屋をキャンセルしまして、
最上階にありますダブルのお部屋を取った・・としか考えられません。
でも・・その時は、そんなことは頭の隅にも浮かびませんで、普段は怖い社長の優しい言葉
に感激してしまったのです。
「スミマセン。わたしはベッドの下に寝かせて頂きますから・・お許し下さい・・」
そう言って、私はフカフカのジュータンを敷いてありますベッドの下を指さして謝ってお
りました。
その時にフト考えました。
{ 社長は女の人とこのお部屋で待ち合わせをしているのじゃないか・・?もし・・女の人
を呼んであるとしたら・・私はホテルのロビーへでも行って居ようか・・?}・・とです。
「1日中引っ張り廻して疲れたろう‥? 明日は花蓮の工場見学だな・・?9時半に起き
て、10時半に駅に行けばいい・・」
「社長こそお疲れになさったことでしょう・・!そうですね!そのような予定になっていま
す」
社長は今日台湾の会社の人と打ち合わせた予定を確認しております。
私はメモを見ながら答えていました。(つづく)
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