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小説 舞の楽園 ( 秘書の遍歴 )


 

秘 書 の 遍 歴 - < 30 >

社長が寮のこのお部屋を訪れるのは初めてなのです。
 ブザーが鳴った時には、私は玄関の板敷の上に正座をしておりました。
 紺色のミニのスカートが太股の中頃まで捲れ上がり、肌色のパンティストッキングの足が
 ちょっと恥ずかしいのです。
 

  「お帰りなさいまし・・」
 扉を開けて社長が入って来ました。私はウィッグを着けた頭を下げました。
 「いらっしゃいまし・・」と言おうと思いましたが、あえて「お帰りなさいまし・・」と
 言っております。2号になった女の意地です。


   「ほう・・勉強したな・・!もう何処から見ても女秘書だ!」
 顔を上げた私を見て、社長は驚いています。
 「これなら・・・外に出ても大丈夫でな・・!よし!飯を食べに行こう!」
 上がって頂いて、唯一の茶器を出そうとしていると、社長はそうおっしゃって立ち上がり
 ます。
 { お化粧を練習いておいた甲斐があったわね。合格点を貰えたようね・・}と安心す
 ルと同時に、{ 今夜は抱いて貰えないのかしら・・}と内心でガッカリしております。
 社長はこのお部屋では1度も抱いては下さらないのです。
 社長としての矜持でしょうか?それとも・・私が余りにも喜びすぎて大声を上げるから
 でしょうか・・?


社長と女秘書姿の私はパレスサイドにあるホテルのダイニングルームにあります。
 今までの人生で食べたことの無い豪華なコース料理が私の前に並んで気後れしています。
 周囲に座っていらっしゃるのは50代から70代くらいに見える上品な紳士と30代
 から60代の装ったご婦人ばかりで、私のような秘書然とした婦人はおりません。

  実は私は、この3~4日と言うものはインスタントの食事ばかりを採っていました。
 寮では、朝・夕食と賄いの小母さんが作って食べさせて下さるのですが、男の姿では
 いざ知らずお化粧も出来ない女の姿では小母さんに会うことも出来ないからです。
 そのことを知った社長は夕食をご馳走して下さったのです。

  音を立てないように注意しながらナイフとフォークを使いました。
 口紅を塗った唇が気になって、あんまり折角ご馳走して下さった食事の味は判りませ
 ん。
 社長はニコニコしながら、私の食事を見ていらっしゃいます。
 今日の社長は優しいのです。怖い感じはちっともしません。
 社長の普段ご家庭での人柄が窺われて、私は嬉しいのです。


  最後に小さなカップのコーヒーが運ばれて来ました。隣の席と後ろの席は空いた
 ようです。
 「清子。明後日、引っ越すんだ!もう引っ越し業者は頼んである・・!荷物の整理は
 何もしなくともよい!」
 突然。社長がおっしゃいました。何時ものことですが、社長のおっしゃることは唐突
 です。

  「えっ? 何処へ・・でしょうか・・?」
 「俺の家だ!婆さんも承知している・・!あの寮のお前の部屋ではお前を抱くことが
 出来ないからな・・。お前の部屋も用意してある・・!」
 焦った私が聞き返しますと、社長は耳元に口を寄せて、後半の言葉は小声です。
 「実は・・婆さんとはもう10年も無いんだ・・!婆さんが『痛い・・』と言って、
 拒否をして・・な!俺のは大きいそうだ・・!」
 辺りを見回してニヤリと笑っています。
 もう謹厳な社長のお顔ではありません。スケベたらしい男の顔でした。(つづく)




















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コメント

No title

うん。やっぱりこの社長は好感が持てるな。
色々な意味で欲望に忠実に生きている。
とても人間らしい生き方をされていると思います。
それでかつ、配慮もしている。
カッコいい人物だなあ。。。

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