小説 舞の楽園 ( 転落の人生 )
- 2020/05/17
- 00:00
転 落 の 人 生 { 49 }
通りを渡ったところにある喫茶店でモーニングを食べました。
社長さんがお出しになった名刺の裏に携帯電話の番号を書いております。
「ここに電話をしてくれる?東京に出て来る仕事が増えそうなんだ・・。また、美子と
合いたいんだ・・」
社長さんのお顔を見ますと、赤くなっておりました。まるで恋をしているのか・・と思
うほどです。
「1か月ぐらいしたら、また出張で来るのだ!その時に合おう・・よ」
「ええ、必ずお電話しますことよ・・」
『1晩だけの行きずりの男の人と思って抱かれたのに・・変ね』と思いながら名刺をい
ただきました。
それから2週間ばかり経って、私は自分の携帯から社長さんに連絡を入れたのです。
『またお会いしたい・・』と言う気持ちを抑えることが出来なかったのです。
「美子ですが・・覚えていらっしゃいます・・?」
「おう。待っていたんだ!今月の24日東京へ行くんだ!会ってくれるね・・」
私が切り出しますと、待っていたんだ・・と言うように、社長さんは出張の予定をお話
になりました。そして24日の午後5時にセントラルホテルのラウンジでお会いする
ことにしたのです。
それから1週間は私は何をするにも手が付きませんでした。『こんな年寄りのオカマの
男が恋をするなんて・・』と思っています。
当日はバイトで勤めているコンビニもお休みを頂きました。このような商売をして
いる私デスガイド出来るだけ綺麗な身体で社長さんに抱かれたい・・と思いました。
朝早くから、初恋の乙女のようにウキウキしまして、お風呂に入って身体を磨き上げ
て、少し濃い目のお化粧を施します。
黒のドレスに真っ赤なガーターで極薄の肌色のストッキングを吊って、薄紫のパンティ
を履いて下宿を出ました。
勿論、昨晩の夕食と今日の朝食・昼食は食べずに浣腸をしまして、肉体の中は綺麗にな
っております。
今日の為に、白いハーフコートを購入しました。
彼との待ち合わせの時間よりも1時間も早く到着してしまいまして、ラウンジでコー
ヒーを飲んでおります。
「待ったかい・・?」
私が窓の外を見ていると、社長さんが声を掛けて来ました。
「ううん。・・今、来たところよ・・」
テーブルの上に置いた携帯の時間を見ますと4時45分でした。社長さんも早くいら
っしゃった見たいです。
私は早く着いたことを隠すように嘘を吐きました。だって・・この男の人に夢中にな
っているのを、悟られたく無かったのですもの・・女心とはそんなものじゃないかし
ら・・
「早かったんだね・・」
私の注文したコーヒーの器を見ながら社長さんは笑っています。(つづく)
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