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小説 舞の楽園 ( 息子の友達 )


         息 子 の 友 達    { 34 }
   「後で話しますことよ。3時にお店が終わるのよ。前で待っていて頂戴・・」
 私は覚悟を決めました。パニックからも立ち直っていました。
 女に変身していることが息子にバレてしまったと言う諦めと、翼様とのことが息子に知
 ったらば息子に軽蔑されるに違いないと言う諦めがあったことは確かです。

  思えば、翼様をお迎えするためにマンションのお部屋を改装した時も、『息子が訪ねて
 来たら何と言おう・・』と思ったことがあります。
 『いずれは息子にもバレてしまう・・』と思ったものです。
 しかしそれが、今日だとは思ってもみなかったので、動転してしまったのです。
 もうこうなったらば、息子にはショックでしょうが、本当のことを全て話す積りになっ
 ていました。
 けれども・・息子と同学年の中学生の翼様のオンナになってしまったことだけは内緒に
 して置くつもりでした・・のに。

  帰り仕度にコンビニの脱衣室で、ユニホームを脱いで下着姿になった私は、備え付
 けの全身が映る鏡を見て「女らしくなったわね・・」と呟いておりました。
 『息子の光太にバレてしまったことは・・もう仕方が無い』と考えておりました。
 ただ・・『息子が私が女になったことを受け入れてくれなくって、愛想をつかされて
 しまうのではないか・・』と考えてちょっと寂しい気持ちでした。
 『それなら・・それで仕方が無いわ・・』と開き直った気持ちです。

  「お父さん。ひかりって名前で呼ばれているの・・?」
 着替えをして、コンビニの表で待っていた光太と歩き出したところで、息子はポツリ
 と聞いて来ました。
 「えっ・・ええ・・」
 さっきまでの確信は当たっていたようです。どうやら息子は翼様と私の関係を知って
 いるようです。
 そうでなければ「ひかり」と言う名前を知っているはずがありません。
 『1番知られたく無かった翼様との関係を、息子が知っている・・』と思った私は再
 び動揺してしまったのです。あいまいに頷いてしまいました。

  「ひかりは翼君のオンナなんだ・・」
 並んで歩いている、別れた3か月前よりも身体が大きくなった息子は、前を向いたま
 ま私の方を見ようともせずに、そう言ったのです。
 「ゴメンナサイネ・・」
 彼が私のことを如何思っているのかが判りませんでしたが、中学2年生の息子に謝る
 他は方法がありませんでした。
 透明なパンストに包まれている白い足を見詰めて、『我ながら綺麗な脚をしているわ
・・」と場違いなことを考えながら、スカートを履いたお尻を振って歩いていたの
です。

 私達は無言のまま1駅電車に乗り、無言のまま歩いています。
『息子はこんなわたしを許してくれないかも知れない。しかし、今日は本当のこと
を話そう・・』と決心していました。(つづく)
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Author:舞
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