障害者の息子 < 35 >
「施設長さん。ちょっとお話しがあるのですが・・・宜しいでしょうか・・・」
私がお尻の処女を正人様に捧げてから3か月目の火曜日のことです。帰り支度をしている
施設長さんに私は声を掛けました。
施設長さんは私の思い詰めたような蒼い顔を見て頷いたのです。
その時は、施設に出勤をする時には、まだ男物のシャツを着てズボンを履いていまして、
お化粧もしてはいませんでした。けれども、眉は細く剃っており、仕草も前よりもナヨ
ナヨとしていたそうです。
施設長さんは『飛田君には何かがあったな・・・』と思っていたそうです。私からは何も
言ってはいませんでしたが、『いずれは相談あるだろう・・・』と思っていたそうです。
『いよいよ、その時が来た・・・』と思ったそうです。
「うん、ここじゃぁ・・・拙いのかい・・・?よし、僕の知っている静かな喫茶店がある
んだ!そこで・・話を聞こう・・・。就いてお出で!」
私が蒼い顔をして頷くのを見た施設長さんはそう言うと、「じゃぁ、お先に・・・」と私
を促して、残っている女性達に声を掛けています。
施設長さんの後に就いて車を走らせて、国道から1本入ったところにある喫茶店に入
りました。
そこの喫茶店の個室のようになっています1角に私達は腰を降ろし、コーヒーを注文した
のです。
「あっ、施設長さん。タバコを吸われるのですか・・・?」
コーヒーが来るまでの間、施設長さんは胸のポケットからマイルドセブンのワンを取り
出して、それを咥えました。私は驚いて尋ねています。
思えば、蒼い顔をして施設長さんの今日の予定を尋ねてから、初めての言葉だったので
す。その言葉で緊張が解れたようです。
「ウンッ、施設では禁煙だからね。家でも吸いたくなると外に出されてしまうんだ!
ここへ来て吸う以外は吸わないよ・・・」
施設長さんは笑って、穏やかな声で言って、火を付けています。
私は年は幾つも離れていないこの施設長さんを父親のように慕っておりました。
「話してご覧。力になれるかも知れないよ・・・」
運ばれて来たコーヒーを1口飲んで、2本目のタバコに火を付けて大きく吐き出し
ながら、穏やかに促してくれました。
「驚かれると思いますが・・・わたくしは息子のオンナになりました。息子の正人様
はわたくしを女にして抱きたいのです。正人様が「オンナでなければ嫌なんだ・・・」
と申すのです・・・」
不謹慎なことは重々分かっておりますが、そして凄く恥ずかしかったのですが、話
始めました。
初めは男言葉でしたが、直ぐに女言葉で女のイントネーションになっておりました。
ところが施設長さんはさして驚いた様子も見せませんで、煙を燻らしているでは
ありませんか・・・
私が女に成ったのは、ここ1か月くらいの私を見ていて、判っていたようです。
私の唯一男であった印のゲジゲジ眉毛も、綺麗に細くなっているのです。細く剃っ
れおりまして、眉墨も使って描いておりますし、女性の多くいる職場と云うことで、
私の言動も女性のようですから当然だと思います。
しかし・・・施設長さんは、私が息子の正人様のオンナになっているなんて思わ
なかったようで、動揺を抑えていたようです。
タバコを持つ手が震えていました。(続く)
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