小説 舞の楽園 ( 障害者の息子 )
- 2020/12/16
- 23:27
障害者の息子 < 42 >
「良くお出で頂きましてありがとうございます。正人です」
息子の正人様も玄関に出まして、キチンと挨拶をしております
「大きくなったな・・・もう立派な大人だ・・・」
施設長さんは眩しそうに正人様を見ておりました。施設長さんが正人様を最後に見た
のは、たしか小学校の低学年の頃です。
正人様と私はこの日の為に家の中を片付けまして綺麗になっている南側の6畳間に施設
長さんを案内しまして、テーブルに座って貰ったのです。
勿論、玄関でコートと背広を脱いで頂いて寛いだ姿になって頂きました。
テーブルの上には、お花も飾ってあります。
正人様と施設長さんがお話をしている間に、隣のお部屋で着替えた私はエプロンを着け
て、冷蔵庫に用意をしたお料理を盛り付けてテーブルに運びました。
お花もお料理も昨日私と正人様でスーパーで買って来たものです。
もうその頃には、ご近所の人達にも正人様のオンナになったことは隠すようなことを
してはいません。同じ団地に住んでいる人達は、私達を変った人だと思っているでしょ
うが、私達は私達の人生を歩むだけだと開き直っております。
ワインを開けて、3人だけのパーティが始まりました。
実は正人様もまだ未成年ですし、私も車で通勤していることもありまして、全くと言
っても良いくらいお酒は飲めません。
今日は特別な日と云うことでワインを用意したのです。
「施設長さん。理佳を抱いてやって頂けませんか?」
パーティが始まって40分ぐらい経た時です。口数の少なかった正人様が突然おっし
っやいました。
「理佳は僕のオンナです。僕が『こう、せい・・・』と言えば理佳は拒否しません。
ホラッ!理佳からもお願いしないか・・・」
余りに突然の言葉でしたので、驚いてしまって私は呆然と正人様の口元を見詰めて
おりますと、彼は私からもお願いするように命令しています。
いえ、呆然としているのは私だけではないのです。施設長さんも驚いたようです。
ワインのグラスを口元に持って行ったまま、呆然と正人様を見ていました。
そう云えば、何時もなら何処に行っても、周りに他人が居ようとも、必ず「理佳」
と付けて物事を言い出すのに、今日の限ってそのようなことはなさらなかったので
す。
『施設長さんには私が正人様のオンナであることを隠して置きたいのかしら・・?
それとも、恥ずかしいのかしら・・・』と思って感謝していました。
だって・・・公式には出来ないことですもの・・・
それを、私が父親のように思っている施設長さんに発表してしまったのです。
もう・・・実際には、お話しをしてあるのと一緒ですので、私も内心は覚悟が出来
ていましたが・・・
蒼白になった私を施設長さんと正人様がジッと見詰めていました。
まさか今日、オンナになった私を、施設長さんに抱かせるなんて・・・ことは思い
も寄らないことでしたので、私は放心状態でした。
しかし、正人様が「家でパーティをしよう・・・」と言い出された時から、計画し
ていたようなのです。≪続く)
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