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小説 舞の楽園 (オトコとオンナの関係 )


          オトコとオンナの関係    ( 24 )
   フルーツを山盛りに持ったトレイを持った斎藤さんが近づいて来ます。
 「お早うざいます。座ってもいいですか・・?」
 「ええ・・どうぞ・・」
 何時もの朝なら女姿の早苗が座っている席に男が座っているので、斎藤さんはそう言って
 います。
 もう早苗は覚悟を決めたようです。
 『どうせバレてしまうなら・・帰りのバスに乗ってからバレるよりも、今バレてしまった
 方が良い・・わ』と思ったらしいのです。
 「どうぞ・・」
 窓の外を向いていた早苗は僕を心細そうに見てから、斎藤さんを見て小さく頷いて、そう
 声を出しました。
 その声は女の声で、引き攣った笑顔でした。

  「エッ・・?」
 早苗の斜め後ろから近づいて来た斎藤さんは吃驚したようです。いくら髪をシニョンに
 纏めてあると言っても、麻の背広を着た男性が、昨日までは女性だと信じていた早苗だと
 は思わなかったようです。
 置いたトレイがガタンと音がして、一瞬、周囲に座って食事をしていた人達の注目を浴
 びたほどです。

  「アアァ・・早苗さん・・なの?」
 僕の座っている傍に来た育子さんが、流石に周囲を気にして言葉にはなりませんでした
 が、目を真ん丸にして口を大きく開けて吃驚した表情を見せながら、僕の隣に座り小声
 で確認しています。
 音を立てた斎藤さんも恥ずかしそうに、それでいて驚いたように口を開けていました。
 「そうです・・」
 「ゴメンナサイ・・ね。黙って・・いて・・早苗です」
 僕と早苗は同時に口を開いています。早苗の女声は周囲の騒音に掻き消されそうでし
 たが・・

  「育子。お前。それだけで・・いいのか・・?もっと、取って来てやろう・・か?」
 斎藤さんが奥さんに話掛けています。
 「あらっ・・いいのよ。あなた、わたしを太らせたいのでしょう?」と育子さんは
 昨日までの育子さんです。
 斎藤さんご夫妻は、僕達の異様な空気を察したようなのです。
 今ここで・・それを話題にしようとは思わないのでしょう。以前のように明るく振る
 舞ってくれようとしています。
 僕は男を、それも父を・・オンナにしていると云う変態的なことをしているんだ・・
 との負い目からか、お2人の快活そうな会話にホッとしていました。(つづく)






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コメント

ハム太郎さん

 こんにちは。ハム太郎さん。
舞の下手な小説をお読みいただいてありがとうございます。
できればで結構ですが、出来るだけお読みいただければ嬉しい限りです。  
タレントさんをモデルに書いて見ようかしら・・・
              舞

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Author:舞
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