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小説 舞の楽園 ( オトコとオンナの関係 )


          オトコとオンナの関係    ( 26 )
  「余り・・見ないで頂けませんかしら・・恥ずかしい・・わ」
 2人の興味溢れる視線に晒されて、耳元まで真っ赤に染まった早苗は子声ながら哀願して
います。男の服装なのに、何故か女の口調です。
その喫茶ルームには40分位居たと思いますが、4人とも口数は少なかったと思います。
けれども、ショックが去った斎藤さんご夫妻も大分男姿の早苗には慣れて来たようです。
空港までのバスの中でも、育子さんと早苗。僕と斎藤さんと言った組み合わせで席に着
いておりました。
現地人のガイドの人は早苗を見てちょっと不思議そうな顔をしていましたが、何も言い
ませんでした。

     < 成田空港と帰りの車中で・・>
 バンコクの空港も成田でも、男姿の早苗は何も言われずに通関を果たしました。
成田の空港で荷物を待っている間に又、斎藤さんご夫婦と一緒になりました。
同じ飛行機でしたが、ご夫婦とは離れ離れに座っていたのです。
「三郷へ真っすぐにお帰りになりますか・・?わたし達は車で来ていますので、宜し
ければお送り致しますよ。どうせ・・帰る途中ですから・・ご一緒しましょう・・?」
斎藤さんが僕達に申し出てくれたのです。僕達は一緒に帰ることにしました。

 「早苗。着替えてお出でよ・・!女の姿の方が早苗には似合うよ・・」
カウンタ―から出て来た荷物を受け取ってから、斎藤さんの車を預けてある駐車場か
らの迎えの車が来る間、斎藤さんご夫妻と空港内の喫茶店ひ入りました。
そこで、僕は早苗に言ったのです。
もう1度、斎藤さんご夫妻に早苗の女姿を見せたくなったのです。
「はい・・」
男姿の早苗は完全な女のイントネーションで素直に頷いて、衣装が入っている旅行
カバンを押してトイレへ向かいました。
喫茶店では他人が多くって、ご夫妻は何か聞きたそうな雰囲気でしたが、内輪の話は
出来ない状態です。
『まだ・・早苗が父だ・・と言うことを話す段階ではない・・』と僕は思っていまし
たので、当たり障りのない話をして早苗を待っていました。

 「お待たせいたしました・・」
女の姿をした早苗がキャスターを押して現れました。
恥ずかしそうに頭を下げた早苗は、黒にゴールドの斜めに線が入った膝丈のワンピース
に薄い濃紺のハーフコートを着ております。
足元はワンポイントの青い刺繍の入った肌色のストッキングに濃紺のサンダルです。
そのワンピースもハーフコートもストッキングもサンダルでさえ、バンコクの市場で
購入したものです。
顔には付け睫毛こそしてはいませんが、バッチリお化粧を施して、耳にはゴールドの
ピアスさえしています。もう、何処から見ても女性です。
早苗はこのタイはの旅行によって、女になる自信を深めたようです。

 「オッ・・早苗さん。女振りが随分と上がった・・ね・・」
「マア早苗さん。素敵・・よ」
男姿の時は実際の早苗の年齢が分ったと思うのですが、それとも、前日までは女だと思
っていた早苗が男の服装をしていたことに不信感を持ったのか判別出来ませんが、お2
人の早苗に対する態度は明らかに異なっていました。それが・・着換えをして女の姿
になって戻って来たことで、2人共前の態度に戻ったのです。
特に、斎藤さんなんかは安心したのか、非常に砕けた様子で冗談ぽく言っています。
僕は『早苗を女装せさせてたことを正解だ・・』と思っています。(つづく)
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コメント

No title

このお話はとても楽しく、且つ食い入るように読んでしまします。まるで早苗さんを自分に重ねるかの様に・・・。
息子程の歳下の彼がいればこんな風になっちゃうのかしら?

No title

 お久しぶりです。
いつもお読みいただいてありがとうございます。
舞も麻美さんのブログを読んでいます。
そうですね。
早苗は幸せ者です。
本年も宜しくおねがいします。

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Author:舞
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