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小説 舞の楽園 ( オトコとオンナの関係 )


          オトコとオンナの関係    ( 27 )
   「それ・・バンコクの市場で買って来たのね・・わたしもワンピースを買おうとした
 ら、家の旦那様が『似合わないのじゃないか・・』と言うのよ。それで、買うのを諦めた
 のよ。わたしも欲しかったわ」
 育子さんは至極残念そうに言うと、隣に座った斎藤さんを睨んでいます。
 「ああ・・お前には似合わないと思ったので・・」
 斎藤さんは小さな声で言って、頭を抱えています。
 もう2人は明らかに早苗を女だと認めた口調です。僕も早苗もその方が有難いのです。
 斎藤さんが頭を抱えたのが可笑しくって、そして嬉しくって僕と早苗は笑ってしまいま
 した。

  「ところで・・早苗さん。何処で・・着替えて来たの・・?」
 斎藤さんが綺麗にお化粧をした早苗の耳元に口を寄せて聞いています。さっきから斎藤
 さんは何か聞きたそうな素振りをしていました。女になった早苗には不思議と男として
何でも話せるような雰囲気があるのです。
「ええ。あそこにある女子トイレですわ・・」
斎藤さんの質問にトイレに入る時を思い出したのか、早苗は赤くなりながらも答えて
います。
「早苗さんって勇気があるよね・・男の姿で女子トイレに入るなんて・・」
「だって・・恵介さんのご命令なんですもの・・わたしも・・必死でしたのよ・・」
感嘆したような言葉に、ますます早苗は赤くなっています。
その前半の言葉に、2人は目を丸くして顔を見合わせていました。一瞬ですが斎藤さ
んが羨ましげな眸をしていたのを僕は見逃せません。
育子さんの眸は何とも言えないように光を放っているようです。
僕はかろうじて聴き取れた早苗の言葉に、2人に対して優越感を持ちました。何とは
なくですが・・お2人を交えて4Pプレイをするような予感がしたのです。
そこへ、斎藤さんの携帯が鳴って、迎えの車が着いたようです。

 「本当に・・男の人なの?こうして早苗さんを見ていると・・男の人だとは僕には
思えないのだが・・」
関東自動車道に乗ると運転している斎藤さんが感嘆の声を上げました。
辺りは暗くなっていましたが、車の中は自動車道の照明の為に時々明るくなり、真っ
暗ではありません。
「わたしも・・よ。本当は女の方じゃないの・・?早苗さんに騙されているんじゃな
い・・?ネエ・・早苗さん。本当のことをおっしゃって・・」
マークⅡの後部座席に早苗と共に乗っている育子さんも、斎藤さんに同調するように
言い出したのです。後ろの席で言いながら、育子さんが早苗に肩をブツケタようです。
2人は今朝から男に戻った早苗に対して遠慮をしていたのが嘘のように、女になった
早苗には開けっ広げなそれでいて親し気な態度でした。

 「ゴメンナサイ。最初の時に言えば良かったのですけれど・・どうしても言えなか
ったのです・・わ。その後も・・良くして頂いて、ますます言いずらくなってしまっ
て・・。本当に申し訳ありません」
謝っています。今日は最初から数えると4~5回めです。
「それじゃぁ・・答えになっていない・・わ。本当のことをおっしゃい・・!」
育子さんの声が後ろから聞こえています。女になった早苗が困っているのを面白がっ
ているような育子さんの声です。(つづく)
 
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コメント

No title

あ、そうそう。
難しいですよね。着替えって。
私も専門学生のころいましたよ。
まあ、職場でもいるんですけど。
結局、着替えはトイレでするしかないという。。。
職場でもそういうことは理解して、
分け隔てなく会話はしているけど、
着替えるのはトイレで着替えないといけないという
申し訳なさは感じますね。。。

No title

そうですね。
空港なんかにも更衣室があるといいのですが・・
けれども、空港などに泊まり込んでいる人たち
はシャワーなんかはどうしているのでしょうね?
難民などは大変なものです。

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