小説 舞の楽園 (オトコとオンナの関係 )
- 2021/01/21
- 23:31
オトコとオンナの関係 ( 28 )
『育子さんはSじゃないかな・・?』僕はフト思ったのです。
斎藤さんご夫妻とお知り合いになって、まだ3日ほどしか経ていませんが、奥さんの育子
さんの方がリードしていることはアリアリです・
斎藤さんご夫妻はとっても仲がいいのです。子供が居ない所為もあるのでしょうが、奥
さんの方が若々しいご夫婦です。
でも、何事も奥さんの方が積極的に行動して、決定も奥さんなのです。
そう言えば、今回のバンコク旅行も奥さんが決定して、斎藤さんは就いて来たのだと言
っておりました。
それが・・このご夫婦の仲良くする秘訣なのでしょうか・・
僕は「早苗は父なのです・・」と言おうと思いました。
2人は、「年が離れている僕と早苗がどの様して知り合ったのか・・?」と言うことに
非常に歓心を持っていることをしっていました。今がチャンスだ・・と考えました。
「もうお判りのように早苗は男です。実は・・早苗は父なのです。僕が早苗をオンナ
にしたのです・・」
前方を見たまま、僕は言い放ちました。僕の声はお2人を驚かせないように静かな声
だったと思います。
その時僕は至極冷静だったと記憶しております。しかし・・それは、表面上のことで、
『とうとう僕と早苗の秘密をバラシテしまった・・』と云う露悪的な解放感と『斎藤
さんご夫婦は如何驚くだろう・・』と云う興味見たいな感情が交差していました。
それを言ってしまった途端です。
高速で走っているマークⅡが大きく左に、そしてハンドルを戻したのか右に振られた
のです。
「キャア・・」
後部座席に座っている2人の女の叫び声が重なって聞こえました。
「危ない・・」
僕も焦って声を出しました。思わず助手席の窓の上にある取手ひ摑まってしまったの
です。周囲の景色が大きく流れていました。
「あなた・・!しっかりと運転して頂戴・・」
「ゴメン・・」
後ろの座席から育子さんの尖ったような叱責が飛びまして、斎藤さんが小さくなって
謝っていました。
「それって・・本当なの・・?」
驚きが収まって来ると、育子さんが呟きました。とてもとても・・大きな声では言え
ないと云った感じです。
「ええ・・本当です・・」
僕は後ろは見ずに、しかしハッキリと肯定しました。早苗は小柄な身体をより小さく
して頷きました。
街灯の光で明るくなったり、暗くなったりする車内で早苗の眸は「如何して・・バラ
シテしまったの・・?」と言うように怨嗟の光を発しているようですが、僕が泰然と
していますと、『わたしは恵介さんの奴隷女だわ・・これも・・仕方がないことだわ
・・』と思ったのでしょう、頷いたようです。
斎藤さんはハンドルをシッカリと掴んでいまして、何故か全身に力が入っているよう
でした。(つづく)
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