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小鉄 舞の楽園 ( オトコとオンナの関係 )


          オトコとオンナの関係    ( 29 )
   暫く重い沈黙が車内を支配していました。
 「どうして・・そんなことを・・?」
 沈黙に耐えきれなくなったように、前方を向いたままの斎藤さんが口走りました。
 「あなた。・・そんな・・」
 育子さんが「そんなことを聞くものじゃないわよ・・」と言うように口にします。流石は
 女の人です。聞く方もそうですが、聞かれた方も答えるのに恥ずかしいと思ったのでしょ
 う。
 焦ったような2人の遠慮しているような、それでいて好奇心一杯のやり取りに、僕はこの
 2人に父との関係を告白してしまったと云う安心感とも暴露感みたいなものを感じていま
 した。

  「そうなのです。早苗は男なのです。そして・・僕の父親だったのです」
 僕は確認するがごとく再度言いました。高揚感に捕らわれていたかも知れません。
 「父親だったと言うと、変に思われるかも知れませんが、僕が2年前に女にしたのです。
 それも・・僕の言うことを何でも『はい』と聞く従順なマゾオンナにしたのです・・」
 「母子相姦ならぬ父子相姦をしている僕達を軽蔑なさるでしょうね・・。でも本当の
 ことなんです・・」
 僕は大変なことを告白しているのに、酷く冷静でした。否、冷静さを装っていただけか
 も知れません。
 内心はこのご夫婦が「親に何てことをするのだ・・」と怒り出すのではないかと云う
 恐怖心が半分と、「とうとう言ってしまった」と云う露悪的な感覚が半分を占めており
 ました。

  「そんなことは・・ありませんよ。人間は人それぞれですから・・しかし・・それが
 本当ならば驚きました・・」
 背広を脱いでワイシャツ姿になっている斎藤さんがフッと肩の力を抜いたのです。今度
 はマークⅡは震えませんでした。
 「こんな・・綺麗な人が男性で、貴方のお父様だなんて・・信じられないわ・・」
 育子さんは暫く黙って早苗を見ていました。何か言いたそうな素振りでした。
 バラされてしまって恥ずかしいのでしょう、早苗は赤いのを通り越して蒼くなって縮こ
 まっていました。身体が細かく震えているようです。

  「でもね・・恵介さん。早苗さん。わたし達、この旅行で折角お友達になれたのです
 もの・・こんなことで仲良くなれないなんて・・可笑しいと思わない・・?」
 突然のように、小さくなって震えている早苗の肩を抱き寄せて、育子さんが言い出した
 のです。僕は「早苗が男で、父です」なんて言ってしまったことを後悔し始めていまし 
 た。
 そう聞かれた早苗はますます困惑したようです。チラリと僕の方を見上げて、育子さん
 を見て、又,下を向いてしまったのです。

  「早苗さん。あなたが男性だって、女性だって・・あたしは構わないわよ・・。わた
 し達は今まで通り仲良くしましょうよ・・」
 「あなた、あなたもいいでしょう・・?」
 育子さんはそう自分で確認して、話を運転している斎藤さんに振りました。
 でも・・その時はこのご夫婦のことを良くは知らなかったのです。単に『性別に拘らな
 い良い人達だな・・』と感謝していたのです。
 そのご夫婦のやり取りに違和感を抱いていたのです。(つづく)
 
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