fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園 ( オトコとオンナの関係 )


          オトコとオンナの関係    ( 35 )
   「ああ・・斎藤さん。ここの会社に・・お勤めですか・・?」
 「そうだよ。会社の名前は言っていなかった・・け?僕は厚生課なんだ・・」
 同じ会社の係長が傍に居るというのに、思わずタメ口を叩いてしまいそうになり、係長に
 袖を引かれてしまっております。
 バンコクで会った時に会社は聞いたと思いますが、その当時の僕は直接は関係が無い・・
 と思ってか覚えてはいませんでした。
 「新任の者です・・」
 係長は斎藤さんに言っています。
本社の厚生課の課長らしく、斎藤さんは白いワイシャツに紺のネクタイ姿のキビキビと
書類を持って歩いていたのです。
それは何処から見ても企業戦士と云った趣で、僕は犬になった斎藤さんを夢見ていたこと
を内心恥じておりました。

 「ちょっと・・待って・・」
係長と僕は名刺を出して挨拶をしようとしましたら、斎藤さんは3~4m廊下の先の厚生
課の課長席に書類を置いて、机の引き出しから名刺を取り出して来ました。
「ちょっと・・時間がある・・?折角だから・・下の喫茶室へ行こうよ・・」
名刺を交換した斎藤さんは聞いて来ました。
まだ新人の僕は係長を伺いますと、「わたくしはこれで・・失礼させて頂きます。上村君
は行って来たら・・?」腕時計を見ながら係長は言っています。
「それから・・今日は直帰でいいよ・・!僕はこれから会社に帰って決裁書類を書かな
ければならないんだ・・」
「大変なのですね・・」と言う斎藤さんと僕を残して係長は帰って行きました。

 
「ちょっと・・下の喫茶室に・・居るよ・・」
課の女の子に言い終えた斎藤さんは僕とエレベーターに乗り、1階の喫茶室に入りました。
4時前なので喫茶室は空いていました。僕達は窓際の席に座りました。
「ここに・・居て。大丈夫なんですか・・?」
「ああ・・何かあれば・・携帯に連絡がはいるから・・いいんだ・・!」
「この喫茶室以外はタバコが吸えなくて・・でも、本数は減った・・よ」
僕が畏まって言うと、斎藤さんはタバコを僕に差し出して頭を搔いています。
僕がバンコクでタバコを吸っていたのを、斎藤さんは覚えていたのです。会社ではノー
スモーキングで通っておりますので、タバコは持参してはいなかったのです。
差し出されたタバコを1本受け取りまして、火を点けて貰いました。

 「奥様が・・ね。君達をご招待したい・・そうだ。煩くって・・ね」
コーヒーを持ってきたウエイトレスが退がると、斎藤さんがやや小声になって言いました。
顔を見ると真っ赤になっております。
「ええ・・僕も早苗も楽しみにはしているのですが・・」
「この5月の連休は・・?早苗さんも帰ってくるのでしょう・・?1度お出で・・よ」
斎藤さんは通常の年上の男性に戻っております。勿論、口調もです。
僕もそれに影響されたのか、社会人1年生の態度を崩してはいませんでした。
そして・・連休中に斎藤さんのお宅を訪問することを約束していました。(つづく
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!