小説 舞の楽園 ( オトコとオンナの関係 )
- 2021/01/28
- 23:10
オトコとオンナの関係 ( 35 )
「ああ・・斎藤さん。ここの会社に・・お勤めですか・・?」
「そうだよ。会社の名前は言っていなかった・・け?僕は厚生課なんだ・・」
同じ会社の係長が傍に居るというのに、思わずタメ口を叩いてしまいそうになり、係長に
袖を引かれてしまっております。
バンコクで会った時に会社は聞いたと思いますが、その当時の僕は直接は関係が無い・・
と思ってか覚えてはいませんでした。
「新任の者です・・」
係長は斎藤さんに言っています。
本社の厚生課の課長らしく、斎藤さんは白いワイシャツに紺のネクタイ姿のキビキビと
書類を持って歩いていたのです。
それは何処から見ても企業戦士と云った趣で、僕は犬になった斎藤さんを夢見ていたこと
を内心恥じておりました。
「ちょっと・・待って・・」
係長と僕は名刺を出して挨拶をしようとしましたら、斎藤さんは3~4m廊下の先の厚生
課の課長席に書類を置いて、机の引き出しから名刺を取り出して来ました。
「ちょっと・・時間がある・・?折角だから・・下の喫茶室へ行こうよ・・」
名刺を交換した斎藤さんは聞いて来ました。
まだ新人の僕は係長を伺いますと、「わたくしはこれで・・失礼させて頂きます。上村君
は行って来たら・・?」腕時計を見ながら係長は言っています。
「それから・・今日は直帰でいいよ・・!僕はこれから会社に帰って決裁書類を書かな
ければならないんだ・・」
「大変なのですね・・」と言う斎藤さんと僕を残して係長は帰って行きました。
「ちょっと・・下の喫茶室に・・居るよ・・」
課の女の子に言い終えた斎藤さんは僕とエレベーターに乗り、1階の喫茶室に入りました。
4時前なので喫茶室は空いていました。僕達は窓際の席に座りました。
「ここに・・居て。大丈夫なんですか・・?」
「ああ・・何かあれば・・携帯に連絡がはいるから・・いいんだ・・!」
「この喫茶室以外はタバコが吸えなくて・・でも、本数は減った・・よ」
僕が畏まって言うと、斎藤さんはタバコを僕に差し出して頭を搔いています。
僕がバンコクでタバコを吸っていたのを、斎藤さんは覚えていたのです。会社ではノー
スモーキングで通っておりますので、タバコは持参してはいなかったのです。
差し出されたタバコを1本受け取りまして、火を点けて貰いました。
「奥様が・・ね。君達をご招待したい・・そうだ。煩くって・・ね」
コーヒーを持ってきたウエイトレスが退がると、斎藤さんがやや小声になって言いました。
顔を見ると真っ赤になっております。
「ええ・・僕も早苗も楽しみにはしているのですが・・」
「この5月の連休は・・?早苗さんも帰ってくるのでしょう・・?1度お出で・・よ」
斎藤さんは通常の年上の男性に戻っております。勿論、口調もです。
僕もそれに影響されたのか、社会人1年生の態度を崩してはいませんでした。
そして・・連休中に斎藤さんのお宅を訪問することを約束していました。(つづく
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