fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園 (万引き )


         「万引き・2」
 「ほう。いいところに勤めているんだな」
一流商事会社の名が印刷されている身分証明書を見て、ズボンを脱いでいる男に
言うと、男はガックリと項垂れた。
その商事会社には、貢はちょっとした恨みがあったのだ。1年半程前のことだ。
貢の勤めていた会社の親会社が、その商事会社からの発注を断られて倒産の憂き
目に遭ってしまい、子会社である貢の会社も連鎖倒産してしまったのだ。
貢は職を失ってしまった。
当時は、この厳しい折、仕方がないと諦めていたが、商事会社が発注をしていた
ら・・と思い、恨みはあった。
定期入れから写真が零れた。男の家族の幸せそうな写真であった。
「美人の奥さんと子供がいて・・旦那がこんなことをして・・」
「内緒にしておいて下さい。会社にも、家にも・・。おっしゃるだけの金額は
支払いますので・・・ですから、知らせないで下さい」
靴を脱いでズボンを取った男が、貢の声を遮って哀願の声を上げていた。以外
と白くて毛の薄い脚だった。
「下着も取れ!全部だ!!」
身分証明を見た貢は許してやる積りは無かった。冷たく言う。
「これで・・・これだけで・・堪忍して下さい。お願いです・・・」
「警察に突き出してもいいんだぞ!窃盗の現行犯だ・・・」
警察に突き出されたら、会社には知られてクビになってしまうし、家族にも
知られてしまうだろう・・と、男は思ったようだ。
涙が滲んできた目を瞬かせながら、それでもノロノロとワイシャツと厚めの
ズボン下に手を掛けた。
「素っ裸だぞ!パンツの中に隠した例もあるからな」
貢はオドオドする男を見ていて余裕が出てきて、冗談を言った積りだったが
通じた様子もない。
「そんな・・・もう、隠してなんかは・・・」

 「だまれ!!調べているのは俺だ!嫌なら、警察へ行こうか?」
男が言い終わらない内に怒声が飛んだ。
男は貢の迫力にヒックッと肩を引いている。そして、今にも泣きそうに顔を
歪めて、諦めの表情を作り、丸首のシャツを脱ぎ白いブリーフに手を掛け、
それでも、諦めきれずに悲しそうに貢を見た。
ことさらに怖い目をした貢は、電話に手を掛ける。男はとうとう観念したよ
うだ、それでも恥ずかしげに後ろを向く。
「前を向いて脱ぐんだ!脱いだらパンツをここに置け!」
机の上に重ねてある男の脱いだ物を指した。
何か言いたそうに口篭ったが、男は観念したようだ。もう、何を言っても
聞き入れられないことを悟ったようである。それでも、非常に恥ずかしげに
背中を丸めブリーフを下ろした。
ブリーフを下げると、白い肌に裸にされる恐怖と寒さで縮こまっている陰嚢と
やはり縮かんでいる男性自身とが、意外と薄い体毛と共に、見え始めた。
女性のように白い肌に肉の付き始めたお腹の部分と、括れが無くなり始めた
腰回り、中年男の裸体は非常に艶っぽく貢の目には映っている。
「脱いだら後ろを向いて、壁に手を突いて足を開け!!」
下ろしたブリーフを未練がましく両足から抜いて丁寧に畳んで、脱いだ下着
の上に置いた男は、両手で恥部を隠していた。
その、途方に暮れたように佇む男に、再度命令する。
縮こまった男性自身は両掌の内にあるが、薄い叢は隠し切れていない。

 貢は会社が倒産して職を離れた時に、妻と別れている。
元々夫婦仲は良くはなかった。妻が貢に愛想をつかせて出て行ったのだ。
貢はせいせいした気持ちで商売女を抱いていたが、お金が無いこともあって
月1度が精一杯であった。
今まで、男なんか相手にしていなかった貢が、裸にしたこの中年男に・・
どうして、欲情を覚えてしまったのか・・・(続く)
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!