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粕谷整形外科病院


     
        粕谷整形外科病院 ― < 1 >
  粕谷整形外科病院の院長の粕谷圭太が朝の回診の後、院長室に戻って白衣姿のまま
黒檀のテーブルに座ると、煙草を咥えてジッポーで火を点けた。
勿論、病院の中は全室禁煙であるが、圭太はこの病院の経営者であり、院長でもあるので、
院長室だけは治外法権であった。
革張りの高級そうなそして大きな院長の椅子の背凭れに深く背を預け煙草の煙を吐き出す
と、彼は自分の履いているズボンの中心が膨らんでいるのに気付いた。
圭太は週に1度は抱いた相手の肉体の中に放出しないと、鼻血が出てしまうと言った体質
なのだ。
これはどうやら、亡くなった父親が漁色家であったので、その血を継いだものと思われる。

 整形外科病院の3代目の院長である圭太の父親は、整形外科医としての腕は良くて評判
になり、病院を大きくしたが、亡くなるまで女淫に励み、病院内の若い看護師にも片っ端
から手を出していたものだ。

 圭太が院長兼オーナーを勤める粕谷整形外科病院は圭太の祖父が昭和の初めに飯田橋の
外堀通りに外科医院を建立して、父の代に大きくして建て替えをしたものである。立派な
近代的な病院であった。
圭太の父親である大先生は余りに女淫が祟ったのか、新しく立て替えた新病院の完成を
見ることなく死んでしまったのだ。
だから、この6階建ての新病院の最上階にある豪華な院長室の椅子に座ったのは、圭太が
最初であった。

 圭太は新病院が完成するまでは信濃町にある大学病院で外科医として勤務していたが、
父親の死によって新築なった粕谷整形外科病院を継いだのだった。
圭太自身も優秀な整形外科医で、若くして大学病院では副部長を務めていた。
粕谷整形外科病院には看護師/準看護師を合わせると50人もの若い女性看護師が働いて
いる。看護師長の橋立君枝が彼女達を総括していた。
橋立君枝は先代の父親の病院で看護師をしていたが、父親が特別に可愛がって看護師長ま
で上り詰めた女である。
年はもう45歳は過ぎている、独身女性であった。

 看護師の中には圭太にモーションを掛けてくる美人看護師もいないでは無かったが、
圭太は手を出さなかった。
これは自分の経験からか、病院内の風紀の乱れを心配する橋立看護師長の方針でもあった
が、やはり経営者となった圭太としては、『自分の身を律して行かなければならない』と
云った経営者としての自覚であったようだ。
もう1つは、『女遊びが過ぎて早死にした父親の二の舞だけはコリゴリだ』と云う意識が
会ったかも知れない。(続く)
 




 
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