小説 舞の楽園 ( 粕谷整形外科病院 )
- 2021/04/07
- 23:15
粕谷整形外科病院 - < 6 >
「ボトルを入れるよ」
乾杯を終わって、暫くママさんと話をしていた圭太は言い出した。『圭太が新しいお客様
になるのだ・・・』と思ったママは嬉しげにボトルとグラスを揃えている。
「何時から・・・ここに勤めているんだね?」
「もう4ヶ月になるわ・・」
ちょうどその時に店に入って来た白髪の老人が圭太の座っているカウンターの反対側の
席に着いた。ママさんがその老人のところに行ったのを見て、圭太は聞いている。
ママさんの打ち解けた様子で話をしている。
『ひっとすると、ママさんのスポンサーかも・・・肉体関係があるのかも知れないぞ』
と圭太は見詰めていた。
すると、圭太の男性自身がムクムクと大きくなり始めた。
「何時ごろに終わるのだね? 今晩は僕と付き合わないかね・・・?」
圭太はママさんが常連さんの方へ離れてくれたことに、チャンスだと思った。
病院に居る内野孝は以前から知っているが、女になった孝子とは知り合ったばかりであ
り、ちょっと強引な気がしないでも無かったが、こう云うチャンスは逃してはならない
ことを圭太は知っていた。
それに、今日の学会に提出する資料を集めて編纂したりして忙しかったのである。この
2~3日は妻も抱いてはいなかったのである。
鼻血が出そうなほどの圭太は、孝子に欲情を覚えていた。
孝子はアイラインを引いた目を大きくして驚きの表情を浮かべてから、化粧で細くし
た眉を顰めてチラリとママさんを伺った。
『まさか、会って直ぐに誘われようとは』思ってはいなかったであろう。不意を突かれ
たようである。
「わたし。朝が早いから・・・11時には・・・お店を出るようにしているの。だけど
・・・」
孝子は顔を赤くしていた。流石に・・・幾ら鈍感でも「今夜付き合わないか・・・」と
言われたらば、肉体を弄ばれることぐらいは知っているようだ。
「そうか。じゃぁ・・これに電話をしてくれないか・・・?」
圭太は自分の副部長の肩書きのある名刺を取り出して、その裏にプライベート用の携帯
の電話番号を書い孝子の方に押し出した。
こう云うところは圭太は機敏であるし、慣れている。
それから少し飲んで、圭太はゲイバー潤子を後にしたのである。
その後。潤子を出た圭太は新宿駅から歩いて5~6分のところにあるシテイホテルの
ツインルームにいる。
携帯の番号を教えた孝子が掛けて来るかは5分と5分だと考えていた。
女装をしてゲイバーでバイトをしているのを、職場の仲間に知られたくなければ、掛け
て来るかも知れないと思っていた。
11時を回った時である。シャワーを浴びて、腰にタオルを巻いた姿で煙草に火を点け
ようとしたときに、テーブルに置いた携帯が鳴った。(続く)
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