小説 舞の楽園 ( 粕谷整形外科病院 )
- 2021/04/09
- 23:50
粕谷整形外科病院 - < 8 >
「シャワーを浴びて来いよ。孝子。良くオマ〇コを洗ってお出で・・」
今日は、いつもの紳士的な仮面を脱ぎ捨てて、思い切りワイルドな自分を晒け出したい
と思っている圭太であった。
今夜は孝子を徹底的に女として扱う積りだった。男の待っているホテルへ来たからには、
孝子もそれを望んでいるに違いないと思ったからだ・・・。
「イヤッ。オマ〇コだ・・・なんて・・・」
言われた孝子は瞬時に頬に赤味を増して、恥ずかしがって恨むように甘えた。
もうそれは、自分を男としては見てくれない副部長に対する怨嗟よりも、女として見て
くれている圭太に対する喜びの声でもあったのだ。
孝子は小学生の頃より、女性に憧れていた。
中学・高校は女になりたいと云うことは無理にでも封印していたが、医療関係の専門学校
に入って東京に出てきて下宿を始めると、女装を始めてもうかれこれ10年を過ぎていた。
今までこそ、こうして女装をしてオカマバーでバイトをしているが、最初の頃は部屋の中
でしか女装も出来ずに、外出なんかとんでもないことであった。
臆病な孝子は映画館や公園などのハッテン場と呼ばれているところに行ってみたい気は
するが、怖くて行くことは出来なかった。
ネットでお知り合いになった男性とは2人しか経験が無い。その男達も最初は面白が
って抱いてはくれるのだが、結局は男の尻に入れるのが目的なのか、女装した孝子に興味
を無くしたようだ。3度までは抱いてはくれるのだが、4度とは抱いてはくれなかった。
『男同士の同性愛と云うのは、そう云うものなのか・・・』と考えた孝子は、女装して
女になって男の人に抱かれたいと云う自分の性に対して異端だと思うようになっていた。
潤子にバイトで入った時も、孝子は意を決して入ったのだ。
ゲイバーと云うところはどんなところであるのか、どんな人物が集まるところであるのか
と前々から興味はあったが、勇気が無くて入れなかったのである。
それでも内心は、もしかしたら、『他の人に女装をした自分を見て貰いたいと云う欲求
を満足させてくれるかも知れないわ・・・』と期待があったのかも知れない。
その時の潤子は2人いたホステスが2人共に辞めてしまって、ママさん1人だけで営業
していた。
店の扉の外側に『スタッフ急募』の貼紙があったのだ。
早いからであろう、孝子の入った時はお客の姿は無かった。
「あのう・・・お店の前に張り出されているあの募集のことなんですけれど・・・」
まさか自分の女装が、このような店で通用するとは思っていない孝子がカウンターに腰を
下ろしてビールを注文するとオズオズと切り出した。
付け出しを小皿に盛ったママさんがシゲシゲと孝子の顔を覗き込んだ。
「僕にも・・・出来るかなぁ・・・」
「あんた。やってくれるの・・・?」
恥ずかしげに言う孝子の顔を覗き込んでいたママさんが、嬉しそうな声を上げた。その声
は思わずに上げた声であろうか、太い男の声だった。『この娘だったら、店の看板娘になる
はずだわ・・・」と思ったのだ。(続く)
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