小説 舞の楽園 （ 或る人生 ）

　　　　　　　　　　或る人生　　　　　＜　１　＞
　　　とうとうわたくしの番が廻って来てしまいました。
　何だか胸がドキドキいたしまして、今にも倒れてしまいそうで、上手にお話が出来ますか
　どうか心配でございます。
　それに付けましても、皆様はそれぞれとてもユニークなご体験をなさっていらっしゃるの
　でございますわね・・。
　お話を伺っていまして吃驚するやら、感心するやら、興奮するやらの連続で、頭が可笑し
　くなりそうでございました。
　そこへ行きますと、わたくしがこれからお話することなんかは、平凡で皆様を退屈させて
　しまうのではないかしらと言う気がしてまいりましたことよ・・。
　でも幹事さん・・わたくしだけがお話しない訳には参りませんでしょう・・？　
　えっ・・「他の人の話を聞いておいて・・そんな訳にはいかない・・」と・・
　それではお話をさせて頂きますわ・・

　　わたし達にとりまして、ＳＥＸの話題と申しますものは、最も秘密にして置きたい重大
　なプライバシーに属する事柄でございます。
　誰もが、ご自身の性的な指向や行動・行為につきましては、素直にお話なさることには抵
　抗を感じてしまうようでございます。
　その点、ここにお集まりの皆様のその素直さと真摯な姿勢には、本当に敬意を抱いてしま
　ったわたくしでございます。

　　プライバシーに拘ったり、恥ずかしいと云う気持ちが働きまして、わたし達はなかなか
　自分の有りのままのセックスライフを情報として交換すると云った機会に恵まれており　
ませんでしたわね。
　そう言った意味も含めて・・わたくしの有りのままのセックスライフをお話しして、こう
　云うセックスもあるのだと言いますことを、皆様に判って貰いたいと思うのでございます。


　　前置きが長くなってしまいましたが、わたくしは・・そう、現時点では・・身も心も・
・ただ1か所を除いてでございますが・・女でございます。
元は・・島田貞夫と云う男性でございました。
「1か所とは何処なんだ・・」とのご質問がありましたが、追い追いご理解されて来るこ
とだと思いますから、今ここではお答えすることは差し控えさせて頂きとうございます。

　わたくしは・・この6月で・・実は４５歳になってしまいましたのよ。
年を取ると云うことは、皆様も同じだと思いますが・・わたくしのような者にとっては更
に残酷なものでございます。
年々容姿が衰えて参りまして、気が付けばスッカリとオバサンになっておりますのよ・・

　　えっ・・「充分に若いじゃないか・・まだ３０でも通るよ・・」
　何て嬉しいことをおっしゃって下さる男性（ひと）でございましょう・・何でしたらば・
・今夜のお相手を承っても宜しいのですが・・
「男が相手じゃ・・しょうがない・・」
そんなことをおっしゃらずに・・わたくしのお相手をなさった殿方は、皆様、「本物の女
以上だ・・」とおっしゃって下さいますのでございますのよ・・
あっ、女性の方もいらっしゃいますのに・・失礼いたしました。（つづく）