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小説 舞の楽園 ( 或る人生 )


          或る人生     < 14 >
   わたくしは途中から何故か怖くなって、目を瞑ってしまったのです。
 だって・・わたくしが美しく生まれ変わるなんて・・信じられなかったのでございます。
 「終わりました・・よ。ちょっと・・濃い・・かなぁ・・」
 林さんの声がして目を開けると、目の前の鏡には女の顔が映っていました。
 林さんのおっしゃるようにチョットお化粧が濃すぎるように感じましたが、紛れもなく
 女の子の顔です。驚いたような顔をしています。
 「こんなものかな・・俺には・・化粧は無理なんだ・・」
 流石に熊さんも、鏡の中を覗き込んで独り言をおっしゃっています。でも・・わたくし
 は大満足でした。
 これがわたくしの顔かと思うくらい変ってしまった顔を、何時までも覗き込んでいまし
 た。

  「それじゃぁ・・わたしはこれで・・帰ります。・・それから・・さっきのことは・・
 会長さんには内緒にして置いて下さい!わたしが頸になってしまいます・・から」
 何時までも、何時までも鏡の中のわたくしを覗き込んでいますと、熊さんは言い憎そう
 にわたくしに声を掛けました。
 「いいえ・・言わない・・わ。これからも・・宜しくお願いいたしますわね・・林さん」
 さっきのこととは『わたくしの包茎のオチ〇チンに口付けをしたことだわ・・』とピン
 と来ましたわたくしは、そのことを思い出して赤くなって頷いたのでございます。
 林さんが帰った後で気が付きますと、ピザとサラダとお紅茶が食卓テーブルの上に用意
 をされておりました。


  その日6時半をちょっと過ぎた頃に、会長さんが綺麗なお花とワインを持ってお部屋
 にいらして下さったのです。
 “ピンポン・ピンポン”とチャイムが鳴りまして、わたくしは松葉杖を突いてお迎えに
 玄関に出たのでございます。
 「いらっしゃい・・ませ。会長さん」
 わたくしが玄関の鍵を開けますと、会長さんはいきなりわたくしを抱き抱えて参りま
 して、わたくしは松葉杖を手放して会長さんの背中に手を回して、唇をお受けしてい
 たのでございます。
 「あっ・・口紅が・・」と言う暇もありません。
 抱き抱えられたわたくしは会長さんのズボンの前が膨らんでいたのを覚えております。

  「良い女になったな・・。林が化粧をしてくれたのか・・?」
 キッスをし終えて、顔を離した会長さんの唇の周りには、赤い口紅が付いております。
 「ええ・・林さんが・・してくださいましたのです・・わ」
 会長さんのお顔に付いた紅を指で拭いながらわたくしはもう女です。
 「もう・・足はいいのかい・・?あんまり・・突かない方がいいんじゃないかい・・
 ?」
 会長さんのお脱ぎになった背広をハンガーに掛けて、クローゼットに仕舞っておりま
すと、会長さんは心配そうに聞いています。
 ええ・・もう・・治ってきています・・のよ。ただ・・足を突きますと・・ちょっと
 痛いのですけれど・・」
 会長さんがわたくしの身体を心配をして下るのがとっても嬉しくて、涙が出てまいり
 ましたのよ・・(つづく)
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