小説 舞の楽園 ( 或る人生 )
- 2021/07/09
- 23:04
或る人生 < 37 >
「死んでいる・・」
蒼い顔をした林さんは呟きました。。次に目を開いたわたくしを見詰めました。
「大丈夫・・か?」
声にはなりませんでしたが、口だけが動きました。
わたくしは『助かったんだ・・』と思うとあんなに諦観をしていたのに、生への欲望が
湧いて来ましたのでございます。
こうして、わたくしは本当に九死に一生を得た訳でございますが、それからが恥ずかし
くって地獄でございました・・
「まあ・・良い思いをした訳だから、その位の罰は当然だろう・・な」とおっしゃる
のですか・・?
そうでございますわね・・。あなた様のおっしゃることにも・・一理あるかと、存じま
すことよ。
思えば・・18の時に会長さんとお知り合いになって、それから約5年の間、会長さん
のオンナとして過ごさせて頂いて可愛がって頂いたのでございます。楽しい楽しい思い
出ばかりでございました。
人生と言うものは・・楽あらば苦ありで・・楽しいことばかりではいけない・・そうで
ございますわね・・
えっ・・「それからのことを・・早く話せ・・!」
そうでございますわね・・
会長さんが亡くなっていることを確認した林さんは、会長さんの死体をわたくしの上
から退けようといたしましたが、フト思い留まったのでございます。
林さんは会長さんの秘書であることを思い出したようです。
まず・・社長さんのお宅に1報を入れて、社長さんの奥様にマンションに来て頂いたの
でございます。
社長さんの奥様は会長さんのたった1人の実の娘さんでございます。
わたくしは会社の創立記念日にお会いしたことがございます。
奥様は痩身の美しい方でございますが、ちょっと近寄りがたい感じがする方でございま
す。
「林さん。ご主人様を退かして下さい・・。他の人達に見られるのは・・嫌です・・
お願いします・・林さん・・お願い・・」
奥方様が「直ぐにいらっしゃる・・」と聞いたわたくしは泣きながらも必死に哀願い
たしましたが、林さんは苦しそうに黙って首を振るばかりでございます。
「お父さん!こんな・・」
直ぐに奥方様が入って来まして、絶句をしてしまいました。
そして・・お2人げ小声で相談しているようです。わたくしは硬くなった首を動かす
ことも出来ません。
結局掛かり付けのお医者様と警察へ連絡をしまして、警察の方が3人ほど見えました。
わたくしは1度は死ぬことを覚悟しました人間です。もう裸体を晒すことは諦めてお
りましたが・・でも、死の淵はど恥ずかしかったことは事実でございます。
だって・・丸裸で縛られて、SEXの姿勢を他の人達の目に晒さなければならなかった
のです・・もの・・(つづく)
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