小説 舞の楽園 ( 一目惚れ‥相思相愛 )
- 2021/08/07
- 22:57
一目惚れ・・相思相愛 { 16 }
「これで・・男性とはお別れね。女として生きて行くのよ。昌子」
アパートにあった全ての物を処分して、アパートを出る時に昌子は呟いている。
女性ホルモンの影響か、体毛もほどんと目立たなくなって、胸も幾分丸く膨らんだ。
今夜は。いえ、これからは熊さんの愛に答えなくてはならない。女としての生活が始
まるのだ・・
「これで・・女としての生活が出来るのね。わたし。本当は・・ね。小さな頃から
女になるのが夢だったのよ・・」
「あの宿であなたにお会いしていなかったら・・ううん、あなたに拾って貰えなかっ
たら・・今の昌子は居なかった・・思うのよ。こんな幸せを下さった神様に感謝しな
ければイケナイわね・・」
「巌さん・・あなた。あそこで・・あなたにお会いしなかったらば、昌子の女になり
たい・・と云う夢は実現出来なかった・・わ」
「また・・あの宿へ行きたい・・わ。あそこに新婚旅行に行きましょうよ・・。ねぇ
あなた・・」
熊さんと同衾しながら女になれた幸せを嬉しそうに語り、お願いしている昌子だった。
「うんっ・・直前まで内緒にして置く積りだったんだが・・来月10日に教会で結
婚式を挙げようと思っているんだ・・!もう予約も取ってあるんだ」
「披露宴も盛大にと云う訳には行かないが、この下の事務所で行うことは皆に言って
しまったんだ・・そして・・新婚旅行はその宿にしよう・・」
熊さんは昌子を喜ばすことをサラリと打ち明けたのだ・・
「そして・・女になった昌子を明日・・皆に紹介しよう・・」
昌子が化粧も上手になって来て、もう誰の前に出しても可笑しいこともなく、女ら
しい仕草も身に付いて来たことを知っている熊さんは『明日。工務店の皆に昌子を
紹介しよう・・」と考えたのだ。
「えっ。もうちょっと・・後ではいけませんか・・?」
「大丈夫だよ。昌子は・・充分、女らしいから。自信を持ちな・・!」
もと男性であることが、事務所の人達にバレてしまうことを恐れている昌子が心配
そうに言うのを慰め・勇気付けていた。
その夜は飲んでいる女性ホルモンの影響でフックラとして来て、もうほどんと元男
性だとは分からなくなっている昌子の躯を、3回も愛してくれた熊さんであった。
次の日の朝。いよいよ下階の皆に昌子として紹介される日である。
興奮しているのであろう早く目が覚めてしまった昌子はシャワーを浴び、今では
ほとんど目立たなくなっている全身の無駄毛を剃り鏡の前に立った。
無毛の白い下腹部にチョコンと突き出している、今は排泄以外には使われることが
ない男性の印を折り曲げて股間に挟み込み、黒のレースのパンティを履いた。
薄いナイロンの肌色のストッキングを履き、黒いが―タベルトで吊る。
身一つでアパートを出た昌子は女性の下着はおろか洋服さえも持ってはいなかった
が、熊さんの前の奥さんの洋服の全てを使用していた。
小柄な昌子には奥さんの洋服が合うのである。
誰に見られる訳では無かったが、今日はパンストを履く気がしなかったのだ・・。
女性ホルモンの摂取と毎日のように熊さんに揉まれて以前よりは確実に大きくな
っている胸に黒のブラジャーを着けて、中に小さいパットを入れる。
今にこのパットもいらない身体になるように豊胸手術を受ける積りだ。
その上に、下が透けて見える程薄手で、腰までしかないランジェリーを着た。
「これで・・いいかしら・・?」と呟いて昌子は鏡の前でクルリと1回転をして
いる。
熊さんはまだ寝床で眠っているようだ・・(つづく)
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