部長は俺の恋女房 { 31 }
部長はこの地に赴任して来て1か月余りだ。「部長はこの街を余り知らない・・」
と思っている。
そこで、「この街1番の中華料理を食べさせてくれる店に連れて行った。
デートとは言っても、店に行くまでの車の中だけは本物の女に成り切っている部長だ
が、男の姿だし店の中では上司として扱っている。
「今日は女の下着は着けていないのか・・?」
けれども、、店に行く車の中で、脚を揃えて俺の方に身体を傾けて来る玲子に聞いて
いる。
「ええ・・着けていますわ・・ほら・・ブラも・・よ」
玲子は甘えた口調で言って、俺の左手を取って自分の胸に置いている。俺の右手は確
かにワイシャツの下の膨らみを感じていた。
「何時・・着けたんだい・・?俺が帰った時には膨らんでいなかったようだけど・・?」
「先程よ・・おトイレで・・着けて来たのよ・・目立つ?」
「いや・・そう言われれば目立つけど・・判らないよ」
恥ずかしそうだけれど、嬉しそうな玲子を横目で見ながら、俺は安心させてやった。
あっ・・忘れている。携帯のことだ・・
「これよ・・2台買って来たの・・」
店に行く車に乗る前だった。駐車場に人がいないことを確認した部長は背広のポケット
から赤と黒の同機種の小振りの2台の携帯を取り出して俺に黒い方を渡している。
会社では玲子にならない約束だったが、待ち切れなかったようだ。
「電話番号は打ち込んでありますわ・・」
携帯を開いて見ると、「玲子」の文字の下に番号が打ち込まれている。俺は部長の女心
に免じてそれを受け取ってやった。
中華料理は少々高かったが、俺は男の意地として奢る積りでドンドン注文して食した
が、玲子はそんなに食が進まない。
『玲子は心だけでは無く、身体の方も女になっているのか・・?』と思ったものだ。
「ここは・・わたしがお支払いをします。わたしは・・」
会計の段になると、伝票を掴んで玲子は小声でそう言う。
「ここは男に任せるものだよ・・」
俺は見栄を張って伝票を奪い返した。
「だって・・」と言いかけて玲子は止めて、非常に嬉しそうに微笑んで「ゴチソウサマ
」と少し品を作った。
きっと、「わたしの方が誘ったのよ。わたしに支払わせて・・。わたしの方がお給料も貰
っているのよ・・」と言いたかったと思うのだが、『自分を女として見てくれてるのだ
わ・・』と感じて、「ゴチソウサマ」と言ったに違いない。
会計の係のオバちゃんが変な顔をしていたのが印象的であった。
その後、俺が知っているスナックに連れて行ったのだ。可愛い女とは別れたく無かっ
たのだ・・
俺は車で通勤している関係上、余り飲みに行くことが無かった。
そのスナックは俺のアパートの近くにあって、歩いても行ける距離にある。
部長を乗せて、いや玲子を乗せてアパートに帰り、歩いてスナックに行くことにした
んだ。。
帰りの車の中では、玲子は俺の右手を握ったままであった。「危ないよ・・」と言うと
手を離すのだが又、何時の間にか俺の右手を取り寄り掛っている。
「少しでも傍にいたい」と言った風情である。
俺はそんな玲子が可愛くなって、信号待ちで停車をした時に抱き寄せてキッスをした
くらいである。(つづく)
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