小説 舞の楽園 ( 退職記念 )
- 2022/03/31
- 22:49
退職記念 - ( 6 )
実を言いますと、私は足がちょっと不自由なのです。
普段は使わないけれども、今回の旅のために杖を用意していたのです。
私がリックザックから杖を取り出して歩き始めると、彼が親切にサポートをしてくれます。
「この橋は狭いよ!大丈夫かい・・?時間も十分あるのだし、ゆっくり行こう・・よ」
途中数か所あります休憩所で私が立ち止まって休んでおりますと、彼が心配して付き添ってくれ
ています。
彼は凄く優しいのです。
ますます彼の人柄が好きになっています。{ このツアーに参加して・・この方とお知り合いに
なれてよかった・・}と思っておりました。
悪魔の喉笛は360度丸く河の底の岩が侵食されて、大量に流れ落ちる水で水爆が立っており
ます。
私達が行った時には河の水量も普通の状態に戻っておりましたが、1か月位前には雨と水量も
多くてとても悪魔の喉笛までは行け無かったそうです。
私達は幸運に恵まれているようです。
お互いのカメラで写しあって、他のツアーの参加者の方にも2人並んでいるところを映してもら
いました。
そこには悪魔の喉笛に来た観光客を写している専属のカメラマンもいまして、2人の姿を写して
もらったりしました。
「もっと・・クッツイテ・・」と現地の言葉と身振りで言っております。
彼と私は遠慮もあって、今まではクッツイテの写真は撮ったことがありませんでしたが、その
言葉でピッタリとクッツイテ写真に納まっていました。
後でその写真を見たのですが、私は赤いヤッケを着て、彼は黒いヤッケを着ていて彼の手は私の
肩に回っています。
「まるで・・夫婦のよだな・・」彼の独り言です。私もそう思いました。
今は、2人で写っているその写真は額縁に入って居間に飾ってあります。
ブラジル側からイグアスの滝を鑑賞しましてから、又、バスに乗り国境を越えてアルゼン
チン側に戻ります。
そして、イグアスのホテルに着きました。今日からそのホテルに2連泊です。
今回の旅はウルバンバの宿を除いては皆一流ホテルでして、快適な旅行でした。
ウルバンバのホテルは1泊だけでしたが、ホテルの建物からも従業員の態度からもとても一流
ホテルとは言い難いものでした。
標高も高かった所以もあるのでしょうが、建物も粗末で部屋には暖房も小さな電気ストーブ
しか無かったのです。夜は寒くって仕方が無かったものです。
ウルバンバにはそういうホテルしかないなでしょうか・・?
お話が飛んでしまいましたが、そのイグアスのホテルでも旅慣れていない私は終始大村さ
んの後を就いての行動です。
ホテルの食事は通常のバイキングですが、2人で食堂に行くと会話も弾みます。
彼は優しくって、ちょっと片足を引きずって歩く私を気遣ってくれて、私の分までお皿に取
って来てくれるのです。私は恐縮しきりです。
夕食後はホテルのラウンジへ席を移して、彼はカクテルを私はコーヒーを頂きました。
何時の間にか、年齢は私の方が5歳ほどですが上なのですが、敬意を込めて彼を「大村さん」
と呼んでいました。
お話をしている時には、会社にいる時のごとく敬語を使っている私です。
時々は「社長さん」とも呼んでいたようです。
彼は気難しいのは最初の時だけで、優しい男性です。敬語に値する人物なのです。
その夜っは昼間に何時もより歩き回ったので私は疲れてしまって、早めにお部屋に帰って
就寝しました。(つづく)
スポンサーサイト