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小説 舞の楽園 (退職記念 )


 

退職記念 - ( 8 )

   「ハハハッ, 強い・・か?」
  彼はそう言って笑っています。
  どうも、このウォーターはお酒が飲めない私が手をだすだろうと、彼が考えて置いたもの       
  のようです。
  彼はこう云うところにも気が廻るみたいです。

   お酒を2口程飲んだだけで、後は専らお摘みのナッツを食べてウォーターを飲んでいま
  したが、彼はナミナミと注がれたコップのお酒をとうとう飲んでしまいました。
  その間、私は生い立ち等を話していました。
  小学生の頃には女性だと思っていたことや、若い頃に交通事故に会ってしまい、右足をちょ
  っと引きずるようになってしまったこと等を話しています。
  お酒も滅多に飲んだことの無い私はその2口か3口のお酒に酔ったようになっていたのかも
  知れません。

   彼はそれだけ飲んでも酔わないようです。
  「そんなに・・飲んだも大丈夫なのですか?明日も旅行があるのですから、もう止めて置い
  たら如何ですか・・?」
  話の合間に、空になったコップを置いた彼の手がお酒の瓶に伸びるのを制止いたしました。
  そう言って瓶を取り上げたのです。
  『あまり飲むと、酔ってしまって明日のクスコへの旅に響くんじゃないか・・』と思っての
  ことです。

    瓶を取り上げる時に、彼の黒い毛が生えている大きな手と、私の白い女性のような手が
  重なりました。
  私はハッとしまして朱くなり彼の手を外しました。
  もう・・強いお酒に桜色に酔っていた私の顔は、真っ赤になっていたようです。

   「白く可愛い手だな・・!女房も可愛い手をしていた・・」
  私の手を、思わず掴んでしまったというような彼の手が言葉と共に、今度はグイッと引かれ
  たのです。
  引かれた私はバランスを崩すまではいきませんが、それでも彼の方へ身体が傾いております。
  「女房も・・そんなことを言っている・・」
  場所も狭く、小さなテーブルが1つなので、斜めに向かい合って飲んでいました。
  すると彼は尚も力を加えて私を引くのです。
  私は彼の胸のの中に倒れ込んでしまって、抱きしめられています。

「エッ・・?」
  再びの彼の呟きに、私は驚いて声が出ています。
  倒れ込んだ彼の胸板は厚く、私は頬を擦り付けていました。
  甚平の片方がズリ上がって、もう片方はズリ落ちています。頬にザラッとした胸毛が当たっ
  ていました。
  彼の言葉に顔を上げて、彼の眸を見詰めていたのです。

   「成田空港でお前を見た時から、気になっていたんだ!容姿がどことなく死んだ女房に似
  ているんだ。死んだ女房が生き返って来たのかと思ったものだ・・」
  私に聞いて欲しいと言われると、そうでは無いような独り言です。
  「お前が欲しいと思ったんだ!俺のチ〇ポが起って来たんだ・・!」
  「お前が男だとは判っている・・!しかし・・俺は欲情を覚えたんだ!」

   何時の間にか「津村さん」と呼んでいた私の呼称が「お前」に変わっていました。でも、
  それを不快には思っていない私です。


   呆然としている私は彼の男根が起っているのに気が付きました。
  大柄な彼の胸の中に入ってしまった私の背中をギューと抱きしめた彼の履いているチノパン
  が大きく盛り上がっているのです。
 「今、見たいにな・・」
  それは大きくなった彼の男性自身です。

   突然の出来事で幾ら酔ってはいて、頭の中が真っ白になってはいても、私は男です。
  彼が今、私に対して欲情している・・くらいは判ります。 
  しかし・・不思議なんですが、怖いとか、汚らわしいとかの気持ちは湧き上がっては来ま
  せんでした。
  むしろ・・彼の眸は真剣そのもの で怖いくらいでした。(つづく) 
  
  
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