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小説 舞の楽園 ( 退職記念 )


 
退職記念 - ( 32 )

   そのウィンクによって、この人はこんな高価な女性の衣装を、わたしに買って下さるのだ
 わ・・と戸惑いと共に嬉しく思ったのです。
 { この人は徹底的に・・わたしに女になることを求めているのだわ・・}と確信したのです。
 それと共に、{ わたしは高価な衣装の似合う女にならなければいけないわ・・。そのことが
 この人の愛に答えることになるのだわ・・}と思い身が震えました。

  「じゃぁ・・サイズはおおよそ解りましたわ・・」
 女店員さんは言っております。
 赤くなった私を見て、{ この人に着せるのだわ・・}と思ったことでしょう。
 黒に近い紫色のドレスを手に取って、彼の方へ笑顔を向けています。
 { オンナになったことがバレバレだわ}私はヒヤヒヤです。
 そのドレスとはサイズは違うようですが、同じ色と形のドレスを着ている顔の無い肢体だけの
 マネキンが置いてありました。
 店員さんが彼と話をしている間に、そのマネキンに私は近づきました。
 その足首まであるドレスをちよっと巻くって見ますと、後ろ側に履いたパンティが見えそうな
 ほど深いスリットが付いております。
 その素敵なドレスを着た時のことを想って、私は頸まで赤くなっています。

  「本来ならば・・彼女を連れてくれば良いのだが・・」
 店員さんに彼は言い訳するように口ごもりながら、今度はスカートを選んでいます。
 結局、深いごげ茶色に金色の鎖が腰回りに着いたロングのスカートとショートの膝上20cm
 くらいの深紅のスカートに、上に羽織る薄茶の上衣と、深いピンク色のセーターを選んでお会
 計です。
 あっ・・ショーツも数点買ったのです。

その後、別のお店で黒と赤のガーターベルトと薄いストッキングを5足とパンティストッキ
 ングを買いました。
 「お持ちいたしましょうか・・?」
 自分が着ける物だとは自身が無い私は2軒目のお店を出たところで、彼の手から荷物を受け
 取っています。
 勿論、傍に他の人がおりましたから男の声でです。
 「うん。持ってくれるのか・・?」
 2軒目でお買い物をした小さな方の荷物を渡しております。
 「そちらも・・お持ちいたしますよ・・」 
 「いいんだ!軽い方を持ってくれ・・!」
 彼は本当に優しいのです。
 まだ女装もしていない男の姿で、彼の後に従って歩いているだけの私に向かって{ 彼女に
 は荷物なんか持たせる訳には行かない・・よ}と言う風にウィンクをするのです。
 彼のそのような姿勢に私はゾッコンです。

  それから靴屋さんに寄って、ハイヒール(・・と言っても4cmぐらいの高さですが・・)
 黒のサンダルを購入しています。
 これはホテルに戻って彼に抱いてもらった後で聞いたお話ですが・・「ハイヒールのパンプ
 スを買おうかと思ったのだがお前の足に合わないといけないと思って、サンダルにしてのだ」
 「サンダルならば後ろのヒモを調整すればいいのだから・・」と・・
 彼はこう云うところにも気が回る男なのです。
 私は彼を尊敬しています。(つづく)
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