小説 舞の楽園 ( 退職記念 )
- 2022/05/05
- 22:36
退職記念 - ( 38 )
翌朝、彼と初めての外出です。
マンションの玄関のところまでは彼をお出迎えに出たことがありますが、外出は初めてです。
「不動産を2~3か所廻って見よう・・よ!」
彼がおっしゃるのです。
プリウスの助手席の座った私は、勿論女装をして完璧に女になっています。
お化粧も上手のなりまして、妻の残したウィッグを被りまして、妻の若い頃に着ていました
セーターを着まして、膝上5cmぐらいのスカートを履いて、白のハーフコート羽織りまし
て、何処から見ても女になっていました。
成田のイオンで買って頂いた、彼のお気に入りのピンクのセーターと真紅のミニスカートで
はありません。
だって、それを着ますと・・余りにも若い女性の姿になってしまうのですもの・・
あっ・・女と言えば・・
最初の頃は{ 彼に愛されたいから・・女になるの・・}と云った義務感みたいなものが
ありました。勿論、オンナになる喜びもあったことは事実です。
それが・・お化粧も上手になりまして、女としてのちょっとした動作や身嗜みも出来ます
ようになってくると、男だったことはスッカリ忘れて自然にお化粧もしまして、彼を迎え
入れるようになっていました。
「お外はまだ・・恥ずかしいわ!それに・・男だったとバレ無いかしら・・?」
「男だったと分かったならば・・あなたの信用に傷が付くわ・・」
プリウスの 助手席 で心配しています。
「大丈夫だよ!今だって・・バレなかったじゃないか・・。もうお前は何処から見ても女性
だよ!心配はしなくっても・・いい!」
彼は言い切ります。
確かに今、玄関から駐車場に向かう時に2人の女性と擦れ違いました。私が黙ったまま頭を
下げますと、相手の方も目礼を返しています。
別に不信がられることもありませんでした。
4階建ての小さなビルですが、1階が不動産屋さんの駐車場にプリウスは停車しました。
「このビルはあいつの自前の物だ!」彼はおっしゃいます。
チョットミニのスカートの裾を押さえて私は車を降りました。そうしないと、ガーターで吊
った肌色のストッキングから白い内股が見えてしまいそうなのです。
{ 女って・・こう云うところにも注意をしないといけないのね・・}と私の感想です。
「やぁ・・元気か・・?」
「いっらっしゃい。お前も変わらない・・な。奥さんの葬儀以来かな・・?」
「そうだな、俺の新しい女房になる人だ・・!津村昭子と言うんだ!昨日頼んで置いた俺の
新居を見たいと思って・・な」
2人は手を上げて挨拶を交わしてから、後ろに控えている私をそう紹介しております。
「昭子と申します。宜しくお願いいたします・・」
「女房になる女だ・・」と紹介されたので私はトッテモ嬉しくなりました。同時に恥ずかし
くなりまして、真っ赤になりながらも頭を下げています。
「大出と申します。ここで不動産屋をやっています・・」
」「こいつ・・いつの間に、こんな若い綺麗な人をゲットしたのだい・・?」
大出さんは私を見て挨拶をしてから崇さんの肩を抱いて言いました。
その言い方はいかにも羨まし気な冗談です。
学生時代からの親友と言った2人の関係が階間見えています。私はそう言う友人はおりま
せんのでとっても羨ましいのです。
それと同時に「若く綺麗な人」と言った大出さんの言葉に{ わたしは年齢よりも若い女
に見られているのだわ・・}と安心してまたまた嬉しくなりました。
この大出さんを好きになりました。ううんっ・・崇さんの次にですよう・・(つづく)
スポンサーサイト