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小説 舞の楽園 ( 退職記念 )


 
退職記念 - ( 41 )

でも、彼の家の人と接するのは全然異なると思うのです。
 第一、家の人に女として紹介されたらば、彼の周囲の人達を騙すことになってしまうのです。
 「結婚なんて・・今のままじゃ、いけないのでしょうか・・?」
 「うんっ。籍は入れられないにしても、家の者には紹介したいんだ・・!小さいながらも
 結婚式をして、お前を正式に女房として迎え入れたいだ・・!」
 「ダメ・・かな・・?」
 彼は大真面目です。
 大真面目な彼は直ぐに判ります。本気でおっしゃる時は、相手の眼をジッと見詰めて目を外
 すことがないのです。
 社長さんとしての彼の身に着きました癖見たいなものです。

  「式を挙げるなんて・・こんな、わたしを・・わたしはあなたと一緒に暮らせるだけで幸
 せなんです・・」
 私の言葉の後半は感極まって言葉にはなっていませんでした。
 「ホラッ。泣くなよ・・!俺が泣かしたみたいじゃないか・・。簡単に式を挙げて、新婚
 旅行は海外へ行こうよ・・な」
 嬉しくって涙が溢れて来て、もう如何しょうも無くなった私を、彼はそんなことまで言って
 もっと喜ばせてくれるのです。

  私はこれからの人生を考えています。
 完全に男を捨てて女に生まれ変わって、彼に就いて行こうと思っています。
 自分の欲望に素直になろうと考えております。
 彼が家の者に私を紹介したいように、私も息子と娘にだけは女になってお嫁に行くことを
 知らせて置きたいのです。
 息子と娘には妻の葬儀の時以来会ってはいませんが、「お父さんは女になった・・」「彼
 のお嫁さんになるのよ・・」と云うことを手紙にでも書いて知らせておこうと考えています。
 当然、子供達は吃驚することでしょう・・
 会って私を説得しようとするかも知れません。
 でも・・もう仕方の無いことです。私の人生は私だけのものですから・・。私が切り開いて
 行かなければならない・・と思っています。


     < 16 > ホテルでの会食

それから10日後、彼と息子さんとお嫁さん、私の4人でスカイツリーの真下にあるホテ
 ルで会食をしました。
 流石に息子さんの3才なるお孫さんは参加をしてはいません。
 彼と私が席に着きますと、既に息子さんとお嫁さんは席に着いていました。
 その時の私の服装は、白い襟の付いたブラウスに黒のツーピースのスーツを着ています。
 彼とお付き合いをするようになってから、必死で減量したのです。今では妻の残したお洋服
 のほどんとが入るようになっていました。

  「この人が昭子さんだ・・」
 私は2人に紹介されました。けれども・・「結婚の約束をしたわたしを男だ・・」とは言え
 無かったようです。
 「実は・・わたくしは男なんです。崇さんには今のところは内緒にしておくように・・と
 言われていますが・・本当のことを申し上げます・・」
 挨拶の後に、私は言ってしまっておりました。嘘は吐けないと思ったからです。
 いずれはバレることなんです。

  「えっ・・?」
 「まぁ・・」
 息子さんとお嫁さんは、緊張と恥ずかしさで青くなっている私の顔を見まして驚いており、
 2人とも声を上げております。
 そして、「本当に・・そうなの・・?」と云うように父親である崇さんの顔を見詰めまし
 た。
 「本当は・・わたくしは崇さんよりも、6つも年上の男なんです・・」
 冷静を装って、私はきりだしたのです。しかも、挨拶の時は女言葉で女のイントネション
 を使っていましたが、今度だけは男のイントネションです・・。(つづく)
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