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小説 舞の楽園 ( 退職記念 )


 
退職記念 - ( 43 )

    会食が始まり紹興酒で乾杯をしまして後は、美咲さんと私はジュースを頂いております。
 「だけど・・おやじも盛んだな・・!こんな綺麗な人をゲットするなんて・・羨ましいよ・・」
 「馬鹿を言うな・・!息子のお前に言われたくは無い!だけど・・昭子は色が白くって、美人
 だろう・・?」
お酒が廻って来たのか、息子の隆之さんが真顔になって言い出したのです。
 彼は赤い顔をして(酔っていらっしゃるからでしょうか?)隆之さんに反論しています。
 「あらっ・・美人だ・・なんて・・」
 それを聞いた私は大層嬉しくなりまして、最初の1杯で赤くなった顔を更に赤くしていました。
 女って「美人だ・・」と言われると幾つになっても嬉しくなるものなんです・・

  「ちょっと・・失礼いたします・・」
 宴も終わりに近づいて、並んで座っています彼にそう断って、私はハンドバックを取り上げま
 した。
 おトイレへ行きたくなったのです。
 男女別々になったホテルのトイレの入り口のところでちょっと迷いました。
 本来ならば男である私は男子トイレに入らなければなりませんが、今は女になっているのです
 から女子トイレへ入りました。
 彼とお付き合いするようになってからは外出はあの不動産屋さんに出かけたのが最初です。
 その時に不動産屋さんでトイレをお借りしましたが、そこは男女兼用のトイレでしたので、迷
 うことはありませんでした。
 思わず、辺りをキョロキョロと見回してしまっていました。

  トイレをして、洗面台の大きな鏡に向かってハンドバッグを開いておりますと、若い綺麗
 な女の人が入って来ました。
 { 男だとバレルのでは無いか・・}と身を小さくしていました。
 「昭子さん」
 そう呼ばれまして振り向くと美咲さんが笑っていました。
 「あらっ・・美咲さん」
 私はホッとしています。
 「お義母様とお呼びした方がいいかしら・・」
 「あらっ・・昭子でいいですよ・・。ゴメンナサイネ。こんな女で・・」
 美咲さんはニッコリと笑って言っております。私が本当は男だと・・言う偏見は持っていな
 いようです。

美咲さんは今時の娘さんらしくって細い身体です。
 背は私と同じくらいですので、ハイヒールを履くと私よりは高くなります。
 コートを脱いで半袖のワンピースを着ておりまして、二の腕などは若い女の人らしくピチピチ
 と輝いておりました。
 「ちょっと・・待っていて下さらない・・?」と言い終えて個室へ入ります。
 私が鏡の前で待っていると「お待ちどうさま・・」と言って出て来ました。
 口紅を引きなおそうとしている私を見て、「お化粧を直して上げるわ・・」と言ったのです。
 そして・・自分のハンドバッグから白粉とパフを取り出しました。

  「わたしね・・結婚する前は美容師だったのよ‥」
 私が美咲さんに顔を任せていますと、彼女が言い出したのです。
 「お義母様見たいに色が白い人は初めてだわ・・!お化粧のノリもいいわ・・!」
 美容師だった美咲さんは感心するように言っております。もう「お義母様」と呼んでいます。
 「ここを・・こうして・・眉を直すと・・。もっと女らしくなるわ。その方が今日のお洋服
 には似合うんじゃないかしら・・」
 頬紅を塗って眉を直して、唇に紅を入れて、私が鏡を見ますと見違えるような美人が写って
 おりました。
 「これが・・わたし・・?見違えちゃったわ。アリガトウゴザイマシタ。やはり・・プロの
 方にお化粧をしていただくと違うわねぇ・・」
 「もっと。もっとお化粧のお勉強をしなくっちゃ・・」
 と思わず言ってしまいました。
 { お化粧ってその時、その時によって変えるのだわ・・。本当に女性に見えるようになら
 なくってはいけない・・わ」と思っておりました。(つづく) 









 

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