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小説 舞の楽園 ( 記憶に残った女

        記憶が・・-1
(1)目覚め
「ここは、何処なんだ?」
ふと眠りから醒めた瞬間、勇はドキリとした。
自分が素っ裸であることにも驚いたが、それよりも、寝ていたのが甘い良い
香りのするフカフカのセミダブルのベッドであったことだ。
腰を起こしてキョロキョロと部屋の中を見回したが、薄暗くしてある部屋の
中はまったくもって見覚えがない。
部屋のなかにあるドレッサーもスツールも、洋服ダンスも女の独り暮らしの
ようで男の匂いさえしない。家具はどれもこれも外国製のようだった。
窓に掛っているカーテンはピンクの厚手の遮光と白いレースの二重で一目で
高級なものだと分かった。
家具の配置などからホテルではないらしい。
だが、もちろん勇が妻と独り息子と3人で住んでいる公団住宅には、こんな
洒落た部屋はない。
これは如何考えても、女の部屋である。それもかなりハイクラスの女の部屋
であった。
だが、肝心の女の姿が見当たらなかった。頭が二日酔いでガンガンしている。

 昨日は土曜日で会社は休みだと云うのに、接待ゴルフで房総の市原くんだ
りまで付き合わされて、帰りは銀座に寄っている。
何時もだったら、「車だから・・・」と言って酒の誘いは断っている勇だっ
たが、昨日は同僚の車で行ったものでつい飲みすぎてしまっていた。
実は一昨日の朝、「明日はゴルフに行く」と言ったことで妻と大喧嘩になって
しまったこともあって、早い時間に帰りたくなかったのでもある。
接待ゴルフを終えてからも、新橋界隈の開いている店を何軒か独りでハシゴ
したのだ。

 (最近は女房ともろくにSEXが出来なくなってしまった俺が、如何して
裸でこんな高級な女の部屋に寝ていたのだろう?)
勇はそう考えながら、恐る恐る下半身を弄ってみた。
昨日の朝履いた、茶色と草色の縦縞模様の妻が買って来たトランクスは履い
てはいなかった。だが、股間のものは朝立ちすら忘れたように小さく縮こ
まっている。
まるで、夕べ放出したかのように・・・
(だいたい誰の部屋なんだ?こんな高級な部屋に住んでいるような女なんて
俺は知らないぞ)
昨晩の最後の方の記憶は完全に消し飛んでいる。
だが、お金に余裕の無い自分が自腹で廻った店は、どこも安い小料理屋か
居酒屋位で、ホステスのいるような高級なクラブ等には入った覚えがなか
った。
(ここは何処なんだ?)
いつもの接待だと車のことと駐車代金のことを心配するのだが、それは心配
しなくともいいらしい。(続く)
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