fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園 ( 1DKのマンションで・・)


         1DKのマンションで・・(18)
「いろいろお世話になりました。今日をもちまして辞めることになりました。
ちょっと、所長さんに・・・」
女言葉に戻り、ペコリと頭を下げた。フッと項が覗いて、甘い香水の香りが
している。
一子は女に生まれ変わって良かったと思いを新たにしていた。
「どうぞ・・」
受付の須藤さんは、いつもと全然ちがう一子に圧倒されたようで、小声で余所
行きの声をだして畏まって一子と熊さんに言っている。
「所長さん。島田・・君・・です」
一子は意を決して、背筋をピンと延ばして、カッ、カッ、カッとヒールの高い
サンダルの音をさせて、衝立の中に入って行った。もちろん、熊さんも一緒で
あった。
「いらっしゃい・・・オッ。ン・・島田さん?。アッ、ンッ、島田君。何で・・
如何したの・・?」
帳簿に目を通していた所長は須藤さんの声を聞いていなかったとみえて、目を
上げて吃驚して叫びます。
「所長さん。永らくお世話になりました。自分勝手でございますが、事務所を
辞めさせていただきたいのです」
もう、開き直って少しですが余裕を取り戻した一子は、鼻に掛った女声を出し
てそう言って、白いハンドバックに入れてあった辞表を取り出して、ポカンと
口を開けている所長の机の上にそっと置いた。
所長の目が付いて入ってきた熊さんの姿を映している。
「私たち、一緒に住んでいます」
「俺たち、結婚しようと思っているのです」
一子と熊さんが同時に口を開いたのです。
熊さんの太い男らしいバリトンの声を聞いた一子が「エッ?」と熊さんの顔を
振り仰ぐ。一子にとっては思いがけない言葉だった。

 「まぁ、座って・・そこに座りなさい・・・」
焦り加減の所長が机を廻り込んで、応接セットを指さしていた。
一子と熊さんはちょっと照れくさそうに顔を見合わせていたが、熊さんが小
さく頷くと、2人は並んで所長の前に腰を下ろしている。
座る時に、心持浅く腰を下ろして脚を斜めにして一子は、低い応接セットの
ソファーに座っている。
ミニのワンピースの裾が捲くれて、ムダ毛の無い白い脚が奥まで覗いた。一
子は顔を赤らめて裾を引っ張っている。その肢体は女そのものであった。
その可愛らしい仕草を見て取った所長は{島田君は女の子なんだ。今までの
男の姿は仮の姿で、これが本当の姿なのだ}と、理解をしている。
そう思うと、落ち着いて話が出来るようになったようだ。(続く)
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!