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小説 舞の楽園 ( 海 )



『 海 』  -1

      ( 1 ) 漁船

   「 ポンポン。ポンポン・・・」
 起動時の騒音から爽快なエンジンの音に変わり、もうどの位過ぎたのでしょうか・・・?
 昨日見た夕焼けの凪いだ海が、瞼の裏側に濃く張り付いていました。

  ふと、誰かに見られている・・と云った意識で、私はその眠りから覚醒したのです。
 「ここは・・?」
 目を開くと、見覚えのない男の陽に焼けた真っ黒な貌が2つ驚きの表情とともに、間地か
 にありました。
 1つは髪もクシャクシャで四角い顔で、顎鬚だけを厳つく刈り込んだ顔。もう1つは髭の
 剃り跡も青々とし、スッキリと若々しい肌が張っています。
 どちらの顔の男も壮健な肉体を赤銅色に日焼けをさせて、一目で海の男と判る男達です。

  「海の上・・さ!あんたは如何して・・何時からそこに居るんだ・・?」
 筋肉隆々と言った感じの髭無の大男が、着ていると云うよりも引っ掛けていると言った
 方が正しいと思われる汚いランニング姿で、機械油で汚れた手を拭きながら、半身を起こ
 した私に問いかけています。
 私の寝ていた場所は、どうやら漁船の胴の間の造り付けの板敷の椅子の上だったようで
 す。


   陽にも焼けたことも無い私の青白い貌と血管の浮き出ている白く細い足を存分に見
 ながら、筋肉質の大男はドスンとばかりに腰を降ろします。
 短パンの毛脛を広げています。
 躯の上に掛けてありました茣蓙がその振動と、私が驚いて身動きをした弾みでズレて落
 ちようとしています。
 まったく日照に当たったことの無い抜けるように白い肌に、ムダ毛が全く無い素肌が
 太股まで男達の眸に晒されてしまっていました。

「 あっ。嫌ァ・・」
 あたかも女性の悲鳴にも似た声を上げて、慌てて身体の上に掛けていた茣蓙を引き上げ
 ようとしましたが、茣蓙は無情にも胴の間の板敷の床の上に落ちてしまっています。
 造り付けの木製の椅子の上には、白い半袖のシャツと白いブリーフだけの丸くなった
 私の姿がありました。

  「如何してここに居るんだ‥?この船で何をしていたんだ・・?」
 ”ドスン ”
 男にしては全くムダ毛の生えていない脚と白い腕を丸めた私を見下ろして髭面の鍾馗様
 のような大男が、私の頭上に腰を降ろしたのです。
 モシャモシャの髭のイカツイ大男は短パン1つで、胸毛も脇の毛も腹部の毛も、その下
 に生えているでしょう剛毛を思い起こさせる、凄く毛深い大男です。
 一瞬、ヒグマを連想させます。


  そう言えば・・
 昨日の朝。何処へ行こう・・とする当ても無く列車に乗り、この小さな港町で・・フイ
 に夕焼けの海が見たくなって、列車を降りたのです。
 そして・・
 海辺の海岸を歩き、夕焼けの真っ赤な海を見て、浜と隣接する港の岸壁に来た時には
 日も暮れかけていたのです。(つづく)























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