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小説 舞の楽園 ( 海 )


 

『 海 』  - 3

     後で知ったのですが、2人は3つ違いの兄弟でした。
  お兄様の方が、鍾馗様を連想させる髭面の方で、全身が毛深く羆のような大男。健様
  32歳です。
  髭の剃り跡も青々と若々しい、これまた全身が筋肉塊のような方が弟さまで錠様。2
  9歳です。
  お2人ともこの港町に住まわれている漁師です。

    今朝も、夜明け前から岸壁に繫いであったこの健錠丸に乗り込み、漁に出たとこ
 ろだったのです。
 漁に出ている間の水や食料品を積み込み、漁網の支度等漁の準備を終えて、今し方胴の
 間に降りて来た模様です。
 2人共、まさか他人がこんなところで眠っていようとは・・思ってもいなかった・・
 と言っていました。
   


ポンポンポンと軽快なエンジン音と小波で舩先が揺れる感覚に、私はここが船の上
 だ・・と言うことを悟りました。
 「ここは・・船の上ですか・・?帰して下さい!・・港に戻って下さい・・!」
 そして・・私は悲鳴のような悲痛な言葉で叫んでいたのです。

  「そうさ!ここは俺達の持ち船健錠丸の上さ・・」
 「これから漁に出て2~3日。天候の具合じゃ4~5日は港にゃ戻れねぇ・・帰して
 くれと言ったって・・戻る訳には行かねぇぞ・・」
 羆のような大男がエンジンの音に負けない大声で怒鳴ったのです。
 「帰して・・戻って下さい・・!間違えて乗ってしまったのです・・港へ戻って下さい」
 顔からは血の気が引いて、私はパニックに陥っておりました。

「馬鹿野郎!!俺たちの問には何にも答えねぇで・・港へ戻れ!だと・・」
 筋肉隆々の大男が顔を真っ赤に染めて、1段と大きな声をしました。
 見も知らぬ大男達に囲まれていることと、男達に怒鳴られたショックと心細さで、私は
 涙が出て来ています。
 女のような可愛い顔を( 私ははそうは思ってはいませんでしたが、彼等は後でそう言
 っていました )手で覆って泣き出していました。
 もう・・その精神状態は普通では無かったようです。

  「オイ!おめいは何処から来たんだ・・?何故・・俺達の船に乗っているんだ・・?」
 泣き出してしまった私を見て、呆れ返ったような2人は声を揃えてまた聞いてきます。
 その声は先程とは違って幾らか優しい声なのですが、まだまだ私には怖いのです。
 「帰して下さい・・」
 私は頭を振って泣いているばかりです。

男達の顔色が変わりました。眉が吊り上がって来ています。
 小さくなって肩を震わせて、顔を覆って泣いている私に男達は女を連想させたみたいな
 のです。
 「女見ていに・・泣くんじゃねぇ・・」
 健様が呟きました。
 『女・・』
 錠様がピクリと反応します。
 2人とも女には飢えている見たいでした。海の男は漁には女を連れては出ないのです。
 謙譲丸の2人もそうでした。

  { オイ。兄貴!犯っちまおうぜ・・}
 2人は目を見合わせたようです。
 その時の2人の眸は女に飢えた野獣の眸でした。(つづく)















































      

























      


































      
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