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小説 舞の楽園 ( 海 )



『 海 』  - 4

 「ウンッ! 錠。ちょっと待てや・・!こう云うことは、焦っちゃいけねぇ・・」
  鍾馗様のような顔を1つ頷かせて、今にも私に飛び掛かって来そうな弟の錠様を押さえ
  ました。
  流石はお兄様だと思いました。後で・・ですが・・
  
   「そう言う訳でよ・・!2~3日は付き合って貰わねぇと・・な!
  丸くなって顔を覆って泣いている私の半袖の白いシャツから出ているあくまでも白い
  2の腕に、毛むくじゃらの陽に焼けた太い手を置いて諭すように言っています。
  「イヤです!帰して下さい・・!港へ帰って・・・」
  捕まえられた腕をビクンと震えさせて、尚も甲高い泣き声で私は言いました。
  『漁に出たらば、2~3日は港には帰らないで漁をする・・』とさっきの言葉を思い
  出して、心の中ではそう言うものかと諦めましたが、私は怒鳴るように話す男達が怖く
  って一刻も早くこの船を降りたいのです。
  後先も考えることもせずにそう言ってしまったのです。

   「人の船に・・無断で乗り込んで置いて、図々しいにも程がある!そうは思わねぇ・
  ・か・・?」
  聞かれたことに対して私の答えが無かったのと、この一言が2人の海の男達の逆鱗に
  触れたようです。特に気の荒い錠様の・・です。
  錠様の1段と高い怒声がエンジンの音を消して響き渡りました。

   「丸裸に剥いて・・海へ放り込んでやろうか・・?」
  「この沖には・・サメがウヨウヨと居るんだ・・!サメに食わせてやろうか・・?」
  錠様の声に続いて健様の脅かすような声が聞こえます。
  2人の若い漁師は顔を見合わせてニヤリと笑ったような気がしましたが、怖くって
  それどころではありません。
  ニヤッと片目を瞑って笑ったのは、私を甚振る口実が出来たと・・思います。
  幾ら海の荒くれ者と云っても、甚振るには口実が必要だからだと思うのです。
  さっきからの私の態度はその口実を与えてしまったようです。


   「そうだ!海へ放り込もうぜ・・!サメの餌になってもらおうぜ・・!」
  「まず・・着ている物を脱がそう・・ぜ・・」
  錠様が何故か嬉しそうに私を脅すと、私の履いていたブリーフを剥ぎ取ろうと下半
  身に手を伸ばして来ました。
  私は慌てました。
  そして・・パンツを押さえて、ハッと気が付いたのです。
  ここは海の上であり、逃げることすら敵わないことを・・
  泣いている場合ではなく、必死になって命乞いをしなければならない・・ことをです。
  
「助けて・・助けて下さい!わたしは泳げないのですぅぅ・・」
  一方、頭の中では、必死になって昨晩起こったことを思い出そうとしていました。
  しかし、頭が割れそうに痛くなるばかりで、ちっとも思い出すことができませんで
  した。
  昨晩、如何やってこの船へ辿り着き、如何して乗り込んだのか、全く覚えていない
  のです。

   「泳げたって無駄だ!岸までたどり着くどころか、数分もしないうちに・・サメ
  の餌食だ・・・!なあ‥錠よ・・」
  健様が「まぁ・・待てよ・・」とばかりに立ち上がりそうな気配を見せています錠
  様を制して、私の反応を見て面白そうに言います。
  私はその一言で竦み上がってしまい、ガタガタと震えてしまっています。(つづく)































   
    





















      
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