小説 舞の楽園 ( 海 )
- 2022/09/27
- 23:31
『 海 』 - 5
( 2 ) 命乞い
「た、助けて下さい!海になんか・・放り込まないで・・・助けて下さい・・!」
「ゴメンナサイ!あなた方の船だとは知らなかった・・!船へ無断で乗り込んだわたしが
悪いのですぅ・・許して下さい・・」
泳げない私は水が怖いのです。
お風呂でも顔をお湯に漬けたことなど無いのです。
まして・・海にサメがウヨウヨと居る・・と聞かされたら尚更です。
一瞬、私の脳裏には、丸裸で海に放り込まれた私が溺れていまして、サメが現れ胴体を
喰い千切られている光景が眸に浮かびました。海は血で真っ赤です。
そして・・脅かされて、死の恐怖に白い貌が蒼白になりまして、板敷の椅子の上から転げ
落ちまして、2人の男の足元に正座をして頭を下げていたのです。
「そんなに助かりたいのか・・?生きていたいのか?」
私の命乞いを楽しんでいるように健様は申しますが、そんなことを感じている余裕さえ
私にはありません。
「は、はい。死にたくはありません!生かして港へ帰して下さい・・!わたくしが悪うご
ざいました・・」
「兄貴。これから漁に行くのに・・足手間といになるんじゃねえか・・?思い切って
海に放り込んじゃった方がいいんじゃねぇかい・・?」
錠様の非情な声を聞いた時には私は震えあがってしまいました。
もう・・ダメだとおもいました。
「そんな・・助けて下さい!何でも致します・・!生かして港へ帰して下さい!助け
て下さい・・!」
幾分ですが優しいと思われる、お兄様と思われる健様の剛毛だらけの脚に縋り付いて、
涙を流しながら哀願していたのです。
「何でもするか・・けれどもこの船の上じゃ・・お前のする仕事はなにも無ぇんだよ
な・・!有るとすれば・・
健様のノンビリとしたような言葉です。
その時は何も知らなかったのですが・・健様と錠様との間では私をオンナにする計画が
あったようです。お2人が頷きあったのもその確認だったと思われるのです。
お2人は計画が順調に進んでいると思っていた見たいです。
「そうさな・・!女だな!お前に女の代わりが出来るか・・?出来れば・・海に放り
込まずに助けてやっても良いがな・・」
足に縋り付いて泣いている私の顎を太い筋肉の付いた赤銅色の毛むくじゃらの太い腕を
伸ばして掴んで持ち上げて、健様は上から私の眸を覗き込み言いました。
長い睫を泣き腫らして潤んだようになっている私の眸を見て『少々年は喰っているが
女のように色白のこの男を、俺と健2人のセックスレイプとするのも面白いかも知れな
いぞ・・』と考えたのです。
「出来ます!やらせて下さい・・!その代わりに・・海には放り込まないで助けて
下さい・・・」
これで助かった・・と考えながら、反射的に私は大きく頷いていました。
女の仕事と言えば、食事の支度や洗濯・縫物等ならば、長い独身生活で大抵のことは
行って来ています。自信もあります。
この男達の身の回りのお世話をするだけで、この命が助かるとするならば・・と云う
気持ちでした。(つづく)
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