小説 舞の楽園 ( 海 )
- 2022/10/26
- 23:18
『 海 』 - 34
( 11 ) 妻になって・・
翌朝、まだ暗い中を、お2人は私の作った心が籠った朝食を食べて、やはり私が作った
おにぎりを持って出かけたのです
お2人はお母様の遺影に手を合わせたことは言うまでもありません。
海はまだ見えませんが、ザンブザンブと波の音は聞こえていいますう。
「ここでいい!充分に注意をするのだぞ・・!お前はもう俺達の妻になったのだからな・
・」
暗がりの中、門のところまでお見送りしようとする丸裸の私を玄関のところで止めて言いま
した。
お2人は本当に、『お家に残しておく私が誰かに盗られてしまうのではないか・・?』と
心配なようです。
もう、私が逃げる・・と言ったことは眼中にも無いようです。
「おっと!忘れるところだった・・!化粧道具を買ってあるんだ!化粧をして綾には、も
っともっと美しくなって貰おうと思って・・な」
「1階の三面鏡の上にある包みがそうだ!それを使って練習をしておけ・・!」
「お前は色が白くって顔が小さいし、2重瞼で造作が華奢だ・・。化粧も映えると思うの
だ・・!綺麗に化粧をして俺達を迎えるんだ・・・!」
全裸の私を錠様が抱き寄せ口を吸い、白いお尻に手を滑らせて言います。
白い貌を仰向けて目を閉じて、流し込まれる唾を飲み込み、背中からお尻にかけて撫ぜら
れる快感に私は喘ぎました。
そして・・代わった健様の深く長い毛の生えている分厚い胸の中で呻きました。
「行っていらっしゃいませ!ご無事を祈っておりますわ・・。必ず帰って来て下さいネ!
綾もお化粧をお勉強しまして、綺麗になってお帰りをお待ち申し上げておりますことよ・
・」
今の私は、戦場に夫を送り出す新婚の妻・・と同じ気持ちです。
『もしお2人の身に何かあったらば・・もし帰らなかった時は、私も死のう・・』とさえ
考えておりました。
辺りは急速に明るくなっています。
港には沢山の船が出航の準備を終えて集まっているようです。
坂を下って行くお2人を植込みの陰から見送ると、私は2階に駆け上がりました。窓辺に
顔を出して港を出て行く船を見下ろしていました。
あっ、謙錠丸のようです。お2人が揃ってこちらに向かって手を振っているのが遠目に
判ります。。
私は自分が裸体なのも忘れて、身を乗り出して夢中で手を振りました。
お2人がそれを見て、「もう引っ込め・・!」と言うような焦った仕草を身振りで示して、
全裸であることを想い出した次第です。
それでも・・身を隠すようにして、健錠丸の船影が水平線の彼方に消えるまで、いえ、
消えてからもなお手を振り続けていました。
だって・・無事に帰ってくるか・・心配なのですもの・・
お2人のご主人様達が行ってしまいますと、放心しまして暫くはボーっと窓辺に縋り付
いています私です。(つづく)
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