fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園 ( 海 )


 

『 海 』  - 62

 この時間は、ご主人様お2人が夕方まで帰らない・・と聞いておりますので、お買い物の帰
  りに喫茶店に入りました。
  女に成って初めての喫茶店です。
  明るい窓の席に腰を降ろして、独りで女性週刊誌を見ております。

   「お邪魔しても・・宜しいですか・・?」
  窓際に座って、下を向いて週刊誌を読んでいると声がしました。
  目を上げると35歳ぐらいのサラリーマン風の男の人が声を掛けて来たのです。。
  「ええ・・どうぞ・・」
  周りを見回すと全部の席が空いております。
  その男性は、私を無量にしている人妻だと・・思ったようです。色々と話し掛けて来るのです。
  これは、ナンパだと・・思いました。

男性だった時代の私は女性からも男性からは言うに及ばず、声を掛けられた記憶がありませ
  ん。
  こうして女になっているからこそ、異性から声を掛けられているのだと思うと、嬉しくって
  なりません。
  私は男性としては魅力に乏しい男性でした。
  このことは、私の今までの生き方を見るまでもなく判ります。
  しかし・・女性としては魅力ある女性のようなのです。
  街を歩いていても、町の男性達が幾度となく振り返るので、私は自信も付いて来ているので
  す。

   先生にも感謝をしなければいけないのでしょうが、1番感謝しなければならないのが健様
  と錠様のご兄弟なのです。
  健様と錠様にあの朝、あの船で逢わなかったら、今の私は無いのです。


   話によると・・彼は医薬品の訪問販売をしているそうで、話題は豊富ですし、ハンサム
  なのですが、如何にも軽薄そうです。
  思わず2人のご主人様と比べてしまうのです。
  しかし、私を女性と認めてくれたようです。
  軽薄な彼ですが、悪い気はしませんでした。

   私のことをいろいろと聞いて来るのです。
  適当な返事を繰り返していますと「ホテルに行きましょうよ・・」とナンパして来るのです。
  もしも・・私が小さいながらも、彼と同じような男性器が付いていると知ったらば、彼は
  如何いう顔をするのかしら・・・と思うとクスリと笑ってしまいました。
  
 
   その晩のことです。例によって健様と錠様に貫かれた後で、今日の昼間に会った彼のこ
  とをお話しますと、「浮気は絶対に許さないぞ・・・!」と叱られてしまったのです。
  『浮気なんかした訳ではないのに・・』
  私は思いましたが、でも、私はこの2人の男性達に焼き餅を焼かせていることに気が付い
  て、嬉しくなったのです。(つづく)



















      
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!