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小説 舞の楽園 ( 5月の連休中の出来事 )


         5月の連休中の出来事―40
 「その眉だけは男だな。・・・よし、剃り落として来い!」
「えっ、それだけは。連休が終わったら、会社に行かなければなりませんの
で・・・・堪忍して下さいませ」
伸二様はそう言っています。彼の言葉は意外でした。私を解放する積りが
無いのかと不安になりました。
眉を剃り落とされたら、女になったことが会社の人達に判ってしまい、会社
にはもう行くことができません。
伸二様の前に改めて跪き平伏して哀願しましたが、彼は「フ、フ」っと笑っ
ただけです。
「逃げる気だな・・・」
低いけれども、恐ろしい声で言いました。今は逃げようとする気も失せて
しまった私は振るえ上ってしまいました。
私は会社を辞めることは考えてもいませんでしたが、眉を落とされてしま
ったならば、会社に行くことは出来ません。辞めざるを得ないようです。
「はい。判りました。眉を落としてまいりますことよ・・・」
女声で女のイントネーションでそう答えるしか方法はありませんでした。
私は彼の女にされたのですもの。そして、これが1番の原因だったので
すが、私は死にたくはありませんでした・・・もの。

 悄然と立ち上がって洗面所に行き眉を綺麗に落として、お化粧に備えて
洗顔をしました。どうせ女に化けるなら美しいと人が認めてくれるように
なりたかったのです。
不思議と涙は涸れ果ててしまったのか、出ませんでした。
まだ三面鏡に置かれている亡き母親の化粧品を使ってお化粧を始めてい
ます。
母親が生きていた時は2間しかないマンションのなかでは、母親の化粧
する姿を見ておりましたので、全くお化粧を知らないと言う訳ではあ
りません。
見よう見まねで思い出しながら、お化粧を始めていました。
洗顔をしてある顔に下地クリームを塗って、白粉を叩きアイラインと
アイシャドーを薄く入れて、剃った眉の跡に眉墨を使って山形の眉を
丸く書き口紅を塗りました。
アイラインとアイシャドーは母親が使っているのを見たことはありま
せんが、会社等で若い女の子達を見ていて使い方は知っております。
化粧が余り濃いのは如何かと思いまして、薄く仕上げた積りです。

 熟れない手付きですが、ルージュを引きますと意外に美しく仕上が
っていまして、自分でも吃驚しています。ウィッグを被ると自分でも
何とか女性に見えなくもありません。
これならば、外に出ましてお買い物ぐらいは出来ると思いました。
『ず~と、女になっていたいわ・・・』とそんなような声が頭の中で
木魂しておりました。
伸二様も吾郎さんも私の女らしくなったことに対しては、意外だと思
ったようです。
「おう、綺麗に化けてものだな・・・」と伸二様は満足そうでした。
(続く)

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