小説 舞の楽園 ( 5月の連休中の出来事 )
- 2023/02/17
- 23:05
5月の連休中の出来事―41
(13)
「では、行ってまいります」
母親の使っていたお買い物カゴとお財布を持って、母のサンダルを素足に履い
て「さっき言ったことを忘れるんじゃないぞ・・・」と云う声に送られて家を
だました。
亡き母のサンダルはちょっと小さい為に踵の紐を1段直しましたが、それほど
高くはありませんので歩く方には差し支えないようです。
それでもマンションの扉を開く時には緊張しています。そっと開いてご近所
の人がいないかどうかを確認してから、家をでたのです。
幾ら変装しているからと言っても、ご近所の人には私が女の格好をしている
のが判ってしまうのではないかと思い、恐ろしくてなりませんでした。
幸いにして、ご近所の方達もこの連休中は出掛けているようで会いませんで、
ホッとしたしだいです。
通りに出ても、初めは女装がバレルのではないかと心配しますとともに、
バレテ騒がれでもしたらと恐ろしくてならなかったのですが、注視する人も
興味を抱く人もいないようで安心しました。
『女として見られているのだわ・・・』と思ったのです。
いつしか、背を伸ばして颯爽と歩いていたのです。
女に成りきる事はある意味で快感だったのです。
女装をしたことは快感なのですが、私だとバレルのはもっと怖いのです。
近所にある何時も行く小さなスーパーには流石に行くことは出来ませんで、
足を延ばして駅前の大きなスーパーに行きました。
駅前のスーパーマーケットはそれほど混雑していると云う訳でもありませ
んが、主婦と思われる人達が大半です。
私は気恥ずかしくて下ばかりを向いていましたので、奥さん達の表情までは
判りませんでしたが、別に指を指されたりすることもありませんでしたので、
無事に乗り切れたものと思っています。
私はスーパーに入ってからも、一言も口を開いていないのです。本当のこと
を言うと、女になっているのがバレテしまうのではないかと口を開くのが怖
いのです。けれどもレジでは、口を開かない訳にはいかないような気がして
います。
女性のレジの係りの人は何となく嫌なので、何台かあるレジで唯一男性が係
りをしているレジに並びました。
「お願いします・・・」
レジ係りの高校を出たてのような若い男の子を前にして、私は出来るだ
け女性のような細い声を出してお買い物カゴをだしています。
若い店員さんはちょっと私を見ましたが「ハイ」と返事をしまして、可笑し
な顔もしませんでしたので、私は自分の姿に自信が出てまいりました。
伸二様と吾郎さんはお肉が好きなようですので、お肉を買い込み野菜も
買いますと、6000円近くのお買い物です。
伸二様から渡してもらった10000円は4000円と小銭が少し残っているだ
けになってしまいました。
帰り道の途中にある煙草屋さんの自動販売機で伸二様の吸っているラークマ
イルド3個と吾郎さんの吸っているマイルドセブンの青い箱を2個買うと幾
らも残っていません。(続く)
(13)
「では、行ってまいります」
母親の使っていたお買い物カゴとお財布を持って、母のサンダルを素足に履い
て「さっき言ったことを忘れるんじゃないぞ・・・」と云う声に送られて家を
だました。
亡き母のサンダルはちょっと小さい為に踵の紐を1段直しましたが、それほど
高くはありませんので歩く方には差し支えないようです。
それでもマンションの扉を開く時には緊張しています。そっと開いてご近所
の人がいないかどうかを確認してから、家をでたのです。
幾ら変装しているからと言っても、ご近所の人には私が女の格好をしている
のが判ってしまうのではないかと思い、恐ろしくてなりませんでした。
幸いにして、ご近所の方達もこの連休中は出掛けているようで会いませんで、
ホッとしたしだいです。
通りに出ても、初めは女装がバレルのではないかと心配しますとともに、
バレテ騒がれでもしたらと恐ろしくてならなかったのですが、注視する人も
興味を抱く人もいないようで安心しました。
『女として見られているのだわ・・・』と思ったのです。
いつしか、背を伸ばして颯爽と歩いていたのです。
女に成りきる事はある意味で快感だったのです。
女装をしたことは快感なのですが、私だとバレルのはもっと怖いのです。
近所にある何時も行く小さなスーパーには流石に行くことは出来ませんで、
足を延ばして駅前の大きなスーパーに行きました。
駅前のスーパーマーケットはそれほど混雑していると云う訳でもありませ
んが、主婦と思われる人達が大半です。
私は気恥ずかしくて下ばかりを向いていましたので、奥さん達の表情までは
判りませんでしたが、別に指を指されたりすることもありませんでしたので、
無事に乗り切れたものと思っています。
私はスーパーに入ってからも、一言も口を開いていないのです。本当のこと
を言うと、女になっているのがバレテしまうのではないかと口を開くのが怖
いのです。けれどもレジでは、口を開かない訳にはいかないような気がして
います。
女性のレジの係りの人は何となく嫌なので、何台かあるレジで唯一男性が係
りをしているレジに並びました。
「お願いします・・・」
レジ係りの高校を出たてのような若い男の子を前にして、私は出来るだ
け女性のような細い声を出してお買い物カゴをだしています。
若い店員さんはちょっと私を見ましたが「ハイ」と返事をしまして、可笑し
な顔もしませんでしたので、私は自分の姿に自信が出てまいりました。
伸二様と吾郎さんはお肉が好きなようですので、お肉を買い込み野菜も
買いますと、6000円近くのお買い物です。
伸二様から渡してもらった10000円は4000円と小銭が少し残っているだ
けになってしまいました。
帰り道の途中にある煙草屋さんの自動販売機で伸二様の吸っているラークマ
イルド3個と吾郎さんの吸っているマイルドセブンの青い箱を2個買うと幾
らも残っていません。(続く)
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