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アルバイト


        アルバイト -(1)
(1) クリスマスの夜
 「お疲れさま。大変だったね。この2日間、折角のクリスマスだというのに」
田岡は店のカーテンを下ろした後、最後まで店に残って清掃をしている大学生の
バイトの男の子の和美に声を掛けた。
田岡はケーキ屋のチェーン店の店長で、35歳の独身であった。
どうしても、イブとクリスマスの当日はケーキを買いに来るお客で行列ができて
しまうことになるので、普段の何倍も忙しく働かなければならない。
まして、年に1度のこの日は多くの女子のバイトがデートのために休んでしまっ
て使い物にならないのだ。
「いいえ。どうせ僕は彼女もいませんし、アパートに独りで居るよりは働いてい
る方がいいんです」
和美は苦笑いをしながら、答えていた。
彼はクリスマスから年末年始だけの臨時バイトであり、確か年は21歳であり、
ソロソロ就職も考えなくてはならない頃であろう。
田岡は彼の勤務ぶりを見ていて、彼が「卒業と同時に、この店の正規の社員に
なってくれればいいな」と密かに思っていた。
3日前に面接に来て会ったばかりなのだが、彼は実に明るい笑顔の持ち主で、田
岡はすっかり彼が気に入ってしまっていた。
決して美男子と言うわけではないが、どこか愛嬌のある笑顔をしているのだ。

「君みたいに明るくて素敵な若者にどうして彼女がいないのだろうね・・?」
お世辞でも何でもなく、田岡は本心から言っている。
「僕は年上の人でないとダメなんですよ。甘えん坊なんですね。それに・・僕
は甘い物が好きで、お酒はまったくダメなんです。デートの度に甘味どころへ
行っていたんじゃ、みんな逃げられちゃうのですよ・・」
和美は何とも可愛らしい笑顔をして、恥ずかしそうに頬を染めた。
メイド服を模したと言われている男女共用のユニホームが可愛らしく、よく似
合っていると田岡は思っている。(続く)
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