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小説 舞の楽園 ( アルバイト )


        アルバイト -(2)
「どうかね? ここに正社員として就職しないか? そうしたら・・そうだ、
売れ残ったケーキはみんな君にあげるから・・」
どうせ売れ残りのケーキなんかは処分するのだしと思いながら、冗談を装いな
がら話を切り出した。
「そうしようかな。僕、店長さんのこと好きだから・・・」
清掃用具を持ったままの中腰の和美は、田岡を仰ぎ見るようにしてそう言った。
「ほんとう?」
話が可笑しな方角に行ってしまったと思ったが、{好きだ}との言葉に田岡は
感激してしまった。思わず、上から和美を抱き締めていた。
「あん・・」
和美は驚いたように小さく声を漏らしたが、拒みはしないで恥ずかしそうに
抱かれている。
その様子が可愛くて田岡は彼の上を向いた唇に、思い切って唇を近づけていた。
田岡は、これまでも男を恋愛の対象にしたことは無かった。ましてや、男と
唇を合わせたことも無い。
しかし、この若い男の子の{好き}という言葉を聞いたとたんに、この愛らし
い若者を自分の物にしたいという欲望が膨れ上がったのである。
面接をした時から、好感は抱いていたのだが、女の子のように可愛いと思った
のはそれからだった。
恐る恐る重ねた田岡の唇を、何故か和美は目を閉じて応じていた。恐ろしいま
でに慎重に侵入している田岡の舌を、大人しく受け入れている。
初めてのキスであろう、湿り気のある吐息は新鮮な果実のような、可愛らしい
甘酸っぱい匂いがしていた。(続く)
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