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小説 舞の楽園 ( 調教師 )





調教師   ー (  5  )

     俺は机の上にあるボタンを押した。
   スィッチを入れると、隣の部屋に俺の声が聞こえるようになっている。

     「ご苦労さん。その色白の男は神崎綾雄と云う名前だ! 『とびっきりのマゾ女に
   調教してくれ・・』との依頼だ!期限は8カ月。身体は整形して、全身を脱毛して、オ
   ッパイを巨大化して、乳首も大きくして、咽ぼとけ取り去って女にしてくれ・・との
   依頼なんだ」
   「ただし・・『 股間の男性器は残してくれ・・』と言うことだ!」
   「腕にヨリを掛けてマゾ女に調教してやってくれ・・!」

     俺はワザと8カ月と言った。依頼人の期限は9カ月である。
   女の調教だったら彼等はもう何十回も調教しているが、男は初めてである。
   余裕を見て置いた方が安全と云うものだから・・と考えたからだ。
   『 調教が旨く行ったらば、1カ月ぐらいは俺の僕として使ってやってもいい・・』と
   ちょっと助平たらしいことを考えていた。

     「 マゾ女に・・ですか?」
   ハーネスだけを着けた男の助手がマイクの方を向いて聞いて来た。
   今もそうだが・・人間と云う生き物は、俺が鏡の後ろ側に居るんだと分かっていても、
   マイクがある声のする方向に向かってしゃべるものだと、俺は可笑しく思っている。

    「そうだ!とびっきりのマゾ女に・・だ!そいつのぶら下げている小さいモノは取ら
   ずに・・後は完璧な女にするんだ・・!」
   俺はマイクに向かって言うと、スイッチを切った。


「初めてだわ。男を女に・・それも、マゾ女に調教するのは・・だけど、面白そう
   ね!」
   「どんな風に変わって行くのか・・とても興味があるわ」
   「うん。そうだな・・!ま、ニューハーフを調教していると思えば・・いいか?」
   2人の会話が聞こえている。
   綾雄の方は、自分が言われているのに気付いていないのか。それともさっきの鞭で打た
   れた恐怖のショックから立ち直っていないのか俺には判らないが、虚ろな眸をして吊り
   下げられていた。

     これは・・後日綾雄から聞いた話であるが・・綾雄は田舎の両親から非常に大切
   に育てられて、叩かれたことなど1度も無かったと言うことである。
   先程の鞭打ちは、綾雄にとっては余程のショックだったようだ。

   
     「今の話を聞いた? お前はマゾ女になるのよ・・!身も心もマゾ女になって、
   旦那様のお気に召すような女奴隷になるのよ・・!旦那様の愛情を受けるようなマゾ女
   になるよりは、お前の生きる道は無いようよ・・」
   「死にたくなかったら、俺達の言うことを素直に聞いて、良いマゾの女奴隷になること
   だな・・」
   ガックリと吊り下げられた鎖に掴まって、すすり泣いている丸裸の綾雄に近づいて、助
   手の男と女は綾雄の身体に触りながら言い聞かせている。

    「イヤだ!イヤですぅ・・。女になんか・・マゾ女になんか、なりません!」
   「ここから・・帰して下さい・・・!」
   攫われて来てからの仕打ちを思い出したのか、理性が戻って来たからであろうか、それ
   とも・・これからのことを想ったのか、突然叫んで身を揉んだ。

    女でも、気の強い女は、ここで叫び哀願するものである。
   幾度も女をマゾ女にするために調教して来た助手達は驚きもしない。むしろ、喜んで
   いるようである。(つづく)

















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