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小説 舞の楽園 ( おやじは俺のおんな)


       おやじは俺のおんな  (2)
 翌朝は普段の平日のように起きだして、ドリップで入れたコーヒーを飲んで
トーストを齧りながら家を飛び出している。
会社に到着して見ると、昨日の間に同僚が仕事を片付けていてくれたお陰で、
電話1本で今日の仕事は終わった。面倒な取引先のことだし、もっと時間が掛
かるのではないかと思って覚悟していたのだがホッとした。
同僚への感謝の気持ちと同時に、時間が余ってしまったことを心配する俺がい
た。
「今日は家へ帰って、寝るとするか・・・」
常日ならば友人と遊んで帰るところを、ここのところ残業続きでちょっと疲れ
ていることもあって、家へ帰ることにしたんだ。
駅前でコーヒーを飲んで、家へ着いたのは11時半を廻っていたと思う。
「ただいま・・・」
玄関のKIYを開けて、声を掛けたが返事はなかった。
<オヤッ。親父は・・>と、思ったが散歩にでも出掛けているんだろうと気に
も止めずにリビングへ足を運ぶ。
「おやっ。・・・そうか!親父は風呂を使っているのか・・・」
背広を脱いでワイシャツのネクタイを緩めたところで、浴室の方から物音が
するのに気が付いて、独り言を言っていた。
リビングに入るなり点けたテレビがお昼のワイドショーをやっているのを横目
で見ながら、俺は汗で濡れたシャツを脱いでいた。
ズボンも取り去って、親父が風呂から出た後でシャワーでも浴びようと思った
のだ・・・

 「ウウウンッ・・・茂さん。来て!・・・お願い・・・」
突然、俺は名前を呼ばれたのだ。
俺が返事をしようとして、俺を呼んだ声が甘いことに気が付いた。
親父は普段は「茂」と俺を呼んでいて、「茂さん」なんて言われたことは1度
も無い。 ?と、おもったのだ。
「茂さんの・・・太いので・・・突いて・・」
再び、甘い蕩けるような声が聞こえて来た。その声は親父の声に間違いはなか
った。確かだ・・・
まるで、彼女がベッドに誘うような調子である。・・・・もっとも、今のとこ
ろ俺には、彼女なんて作る暇もないほど会社に扱き使われているが・・・
「うんっ?。親父は何をしているんだ・・・?」
興味を引かれた俺は音をたてないようにそっと、脱衣所へ忍び寄って行った。
その時の俺は半信半疑であった。でも確かに親父の声であり、確かに「茂さん」
と言う声を耳にしたのだ。
親父は俺にはちっとも似ていない(いや、俺は親父には似ていないと言い直す
べきであろう)。骨が細いのだろう体格も華奢で丸みを帯びていて、女に生ま
れてくれば美人だったのにと思えるほど色が白い。
いつも以前から、女に生まれてお化粧も完璧にすれば、どこの女性にも負けな
い美人になるだろうと俺は思っていた。
俺は背も高く、骨太で、筋肉もそれなりに付いていて、自分では男らしい身体
だと思っている。しかし、地黒って言うか、他人と比べても色が黒い方である。
現在では冬でも男も肌を焼く時代であるが、小学生にはそれをコンプレックス
に思っていたこともある。
そんな訳で、色の透き通るような女性に憧れて、そう云う女の人を嫁に貰いた
いと思っている。(続く)
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