小説 舞の楽園 ( ギブス )
- 2023/06/17
- 23:21
ギブス -1
(1) 喘ぎ声
「あ、あっ。ううんっ・・・」
龍三と庄司は悲鳴にも似た声を聞いたような気がして、顔を見合わせた。
「イヤッ、止めてっ・・・」
途切れ途切れに聞こえてくるその声は、聞きようによっては甘えているような
喘ぎ声だったのだ。
周囲は暗くて気味が悪いが、その声は瞬時に2人の若者の股間をいきり立たせ
るには充分だった。
どうやら、その声は通路の奥の車椅子専用トイレの換気口から聞こえてくるよ
うだ。
ここは城東総合病院の1階待合室と各科の診療室とを結ぶ通路である。しかし
夜も10時を過ぎたこの時間は人っ子独り居ない。
グリーンの人が走っているマークの非常誘導灯が、辺りを白々と照らしている
のみであった。
昼間は人が溢れかえっている空間であるが、夜はこの季節にも寒々としてもの
悲しい。
「ううんッ。よして・・イヤッ」
その声は幾分低くはあったが、通気口を通してハッキリと2人の耳には聞こえ
ていた。
龍三と庄司は目と目を合わせてから、奥のトイレへ急いだ。
「如何かしましたか?」
一応は声を掛ける。・・・それが、見知らぬ人への礼儀だと思ったからだ。
2人は声の聞こえる車椅子専用トイレの蛇腹になった扉を押し開けた。
鍵は掛かっていなかった。・・・と言うより、鍵は掛ける構造にはなっていな
いようだった。
「あっ・・・」「あああっ・・・」
驚きの声が重なって響いた。
もしかしたら、女の人が襲われているもでは・・?助けたら・・と言う2人
の期待は裏切られた。
その代りに・・・・・
車椅子専用の広々としている空間に、脚にギブスを巻いたすこぶる白い肉
体が便座の上に乗っていた。
上半身には薄い緑色の格子柄のパジャマを引っ掛けているものの、下半身に
は何も着けていない。ギブスを巻いた右足はおろか無傷な方の左足までも、
車椅子を支える障害者のために付いている金属のバーの上に乗せている白い
肉体があったのだ。
それも、2人は便座の上に寝ているような格好の白い肉体の、真正面に出喰
わしてしまったのだ。当然、薄い恥毛と共に持ち上げられた脚の隙間からは、
ピンクに近い褐色の股間のものは丸見えになっていた。
蛍光灯に映し出されたその白い肉体は妙に艶かしく龍三と庄司の目には映っ
ていた。
あくまでも白く、毛もほとんど生えていないスベスベのその肉体を見た瞬間
には2人共女だと思ったものだ。(続く)
スポンサーサイト