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小説 舞の楽園 ( ギブス )


        ギブス  -23
 (11)加納先生
 今、紀香は信用金庫に勤めていた時に住んでいた街から100km以上離れ
たところにあるコンビニで働いている。
龍三、庄司、譲との関係も金庫を辞めた半年後には紀香からお願いして切って
しまっている。
龍三の長い男根も、庄司の巨大な砲身も、譲とのご主人様と奴隷女の関係も、
女になった紀香には魅力的ではあった。しかし、女として彼らを待つだけの生
活を始めた紀香には堕胎的に思われて仕方がなかったのだ。
紀香は3人の思い出から逃れるように身1つで住んでいた街を離れて、この
田舎に移って来たのだ。そして、国道沿いに新しく出来たこのコンビニに女性
として採用されたのだ。
紀香が左足を骨折して城東病院に入院してから、もう2年が経とうとしていた。

 ある日の夕方、コンビニのレジを打っていた紀香はジッと見つめられている
気配を感じて、ますます白くなった顔を上げた。
「アッ。加納先生」
紀香は思わず口走ってしまっていた。
目の前には、あの城東総合病院の整形外科医の懐かしい顔があったのだ。
「やはり森下君だね?君のことが気になって・・・探したんだ」
「変りはないかい?」と、加納医師は聞いた。
「ええ。お蔭様で・・先生には感謝をしておりましてよ・・先生もお変わり
ありませんか?」
レジに手を突いて紀香は言った。紀香の声もイントネーションもすっかり女の
それであった。
「うん。僕は病院を替わってね。今はこの先の南中病院にいるんだよ」
すっかり女性化した紀香を眩しそうに見ながら、加納医師は懐かしそうに言
っている。
「まあ、そうなんですか?この国道は良く通るのかしら?」
「うんっ。週に3日は通っている計算になるな。森下君、今日の勤務の時間
は・・・?」
加納先生は釣銭を受け取りながら、今日のコンビニの勤務時間を聞いていた。
「今日は後1時間程なのですが・・・」
紀香が城東病院に入院していた頃の先生の優しさと、退院してギブスを取っ
て貰ったときのことが、走馬灯のように紀香の頭の中を駆け巡っている。
懐かしかった。あの優しい先生ならばこの肉体を捧げてもよいと思っていた。
いや、先生ならばこの肉体を上げたかった。
「では・・終わるのを、車で待っているよ・・・どこかで食事でもしながら
再会を祝えないかな?」
先生は他のお客に聞こえないように小声で、それも紅くなりながら言ってい
る。
「はい!」
紀香も声を落として返事をしていた。
恥ずかしかった。男だった自分を知っている、それも龍三や庄司達とのこと
を良く知っているであろう先生に再会したのだ。そして、今、彼らとの肉体
の交わりについても話さなくてはならないようである。(続く)
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