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小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


         「 薫 」(3)
私は黙ったまま大将の盃にお酒を注いで、話を促しています。私は大将に
誉めて貰って(?)ちょっと複雑な気持ちでしたが、それでも悪い気はし
ませんでした。
 
「山ちゃんは余計なことは誰にもしゃべらないことを知っているから、教え
てしまおう・・・・」
大将は又、話を続けています。
「実はあのカカアのことなんだけど、あいつは俺が前の店をやっている頃に・
• ・・あっ、この店じゃないんだ。俺は前の店を畳んで此処へ来たんだ・・・
その頃、毎日のように俺の店に来ていたんだ。酒やビールなどはほどんと飲め
ないのにネ・・・」
私は大将がお店を替えたらしいことは、以前聞いたことがあるのを思い出して
いました。
「『何のために店に来ているんだい?』って尋ねたことがあるんだ。そうしたら
『独身だから食べる物を考えるのに困っている。ここだったらば、美味しい物
を食べさせてくれるので通って来ている』と言ったんだよ」
「まあ、そうだろうな・・・と思ったよ。50を過ぎたならば、会社の仕事の
上でも重要な地位にも就いているだろうし、独身男じゃ自分の食事の用意もす
る暇がないんだろう。コンビニやスーパーの惣菜では直ぐに飽きが来てしまう
からな・・・。その男がね。時々俺を見る眸がね・・・今の山ちゃんの眸にそ
っくり似ているんだよ・・・・」

そこまで聞いていて私は大将が何を言っているのか、さっぱり解らなくな
ってしまったのです。
だって、奥さんの話を始めたと思ったらば、50歳を過ぎた男の話を突然始め
るのですもの・・・
大将は珍しく酔っているのかな・・と思ったのです。「女」を「男」だと言い
間違えて言っているのだと考えたのです。
女だって最近は地位が向上して上級職に就く人も珍しく無くなっている時代
です。そうなれば、おのずと大将が言うように食事を作る時間等も無くなるで
あろうし・・・・。
そうだ!そうに違いない!そうすれば話の辻褄は合う・・・と、私は勝手に
解釈したのです。
  
しかし、私の困惑などお構い無しに、大将は話を続けようとしています。
「そいつが何時だったのか覚えてはいないんだが・・・あっ、ありがとう」
私は大将の飲み干した盃にお酒を注いで上げました。
「プッツリと来なくなったんだ。転勤するような話も聞いてはいなかったし、
どうしたものかと思って気にはなっていたんだよ・・・」
「そうこうして2ヶ月位した頃に、そいつから電話があったんだ。『仕事を辞
めてちょっと国外に行っていたもので、連絡もしないで悪かった』と言って
いたな・・・」
大将はそう言って思い出すような眼をして、お酒をちびっと飲んだのです。
「それから後は1週間に1度位の割合で、店には連絡をくれていたんだ・・・
また途中1ヶ月位外国へ行っていたらしいけどな・・・・」
「その後はまた、1週間に1度位の割合で連絡をくれていたんだよ・・・」
【続く】
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