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小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


         「 薫 」(8)
  <今ちゃんの想い>
 俺が大将のやっている店に入って行くと、客は山ちゃん以外にはいなかった。
まあ、山ちゃんが俺の目当てだから、山ちゃんさえ居れば俺には不足はないの
だが・・・
しかし、大将の店も暇だね。こんなに客が来ないと潰れてしまうのじゃないか
と心配だよ。

俺が店に入って行くと、山ちゃんが真っ赤な顔をして恥ずかしそうにしている
のに気ずいたんだ。
「何で紅くなっているの・・・?」
俺は聞いたが、山ちゃんは下を向いた切り答えてくれない。大将は笑っている
だけだし・・・あっ、奥さんも居たね。
俺と会うのは確か2度目で店にはめったに来ない奥さんもニッコリと微笑んで
いるだけなんだ。俺は何が何だか分からないでキョトンとしてしまっていた。
その様子が可笑しいと言ってまた皆が笑っている。大方、俺の良からぬ噂話で
もしていたんじゃないかと、俺はちょっとムクレていた。、

「今日は暇だから・・・」
俺が店に入ると、大将はそう言って暖簾を下ろしてしまったんだ。鍵を掛けて
しまって、後は4人で酒を飲むことになったんだ。・・・と言っても、大将の
奥さんはお酒を飲めないので俺達3人にツマミを出したり、燗を付けたりして
サービスをするだけだったが。
奥さんはこう言うことには慣れていないみたいでどことなくぎこちなく、それ
が俺には新鮮に思えたものだ。
大将が奥さんに抱いている生娘の初々しさみたいなものを俺達も味わっていた
と思っている。その時は、俺は奥さんが元男であったとは知らないものだから、
余計にそう思ったんじゃないかな。
ず~っと後で、そのことを薫に話すと「元男だなんて、わたしも思わなかった
わ・・・」と薫も言っていた。

俺は美しい奥さんだと思った。元男だとは知らないものだから、特に大将に
媚びている訳ではなかったが、「いい奥さんだ・・・」を連発していたようだ。
本当にそう思ったのだ。
大将はニヤニヤ笑うだけで、奥さんは謙譲してか控え目に笑っているばかりで
あった。
後で聞いたのであるが、この時山ちゃんはいや薫は「日本の女はこうでなけ
ればならないのだわ・・・わたしも奥さんを見習わなくちゃ・・・」と思っ
ていたそうである。
 
それから程なくして大将の店を出て帰りすがら(あっ、雨はもう上ってい
たようである)山ちゃんが小さな声で聞いて来たんだ。
「今ちゃん。今ちゃんはわたしのことを好き・・・ですか?」
今考えると、山ちゃんは酒をそんなに飲んではいない。酔った振りをして思
い切って聞いてきたのだと思えるんだ。
「もち論、好きだよ。だからこうして山ちゃんと付き合っているんだ」
俺は恋愛には非常に鈍いから、又ちょっと恥ずかしかったから、そう答えて
いたんだ。
「違うんですよ。わたしと・・・一緒に、寝たい?」【続く】

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