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小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


1         「 薫 」(9)
そうしたら、山ちゃんは酔った勢いか、甘い女の声で言っている。俺はグッ
としたね。その時の山ちゃんの眸は真剣な色を帯びているように俺には見え
たが、俺は彼が何時もよりは酔っているんだとしか思わなかったんだ。
「酔っ払った時には、一緒に寝ているじゃないか・・・」
その時の俺は山ちゃんの聞きたいことをはぐらかすように答えていたのだ。俺
はつくづく恋愛には疎い男だなあと考えていた。
だけれども、酔った振りをしている山ちゃんは、俺を何とかして自分の家へ連
れて行こうと考えていたのだ。
山ちゃんの作戦は成功したようだ。本当のことを言うと、俺も彼女(まだ俺の
女にはなっていなかったから、彼か・・・)の家へ行くことを期待はしていた
んだ。
  
山ちゃんは酔っ払った振りをして(その時は本当に酔っ払っていると、俺は
思っていたのだ。後から彼女に聞くとそうでも無かったようだ)俺が山ちゃん
の部屋に入った時、玄関先で靴を脱ぐ前に抱きついて来たんだ。そして、唇に
キスをして来たんだ。顔じゃないよ。唇にだよ。
山ちゃんがキスを仕掛けて来た時に嫌悪感は覚えなかったよ。それどころか、
俺は背筋に快感の戦慄が走ったのを覚えていたのだ。不思議だったんだ。男と
男だよ。俺は自分のペニスが興奮して勃って来るのを感じていたんだ。
山ちゃんは強く俺に抱きついたまま、そのままジッとしているんだ。今度は
反対に俺の方から山ちゃんを強く抱きかかえて、キスをしてやったんだ。も
ち論山ちゃんの唇にだよ・・・
やっと俺の想いが通じたようだと想ったね。
俺は自分からはどうしても言い出せなかったんだ。まさか山ちゃんから、こう
して積極的になって貰えるとは、思っても見なかった。山ちゃんは思いも寄ら
ず積極的な人なんだなと思ったものだ。

俺は若い頃、恋人が(無論、女性であったが・・・)自動車事故で死んでし
まってからと言うものは、その恋人のことが忘れることが出来ずに・・と言う
か、尾を引いて、誰も好きになることも出来ずに結婚すら出来なかった。
山ちゃんとはあの大将の店でしか会うことは出来なかったが、出会って何度か
飲むうちに、何だか気持ちが落ち着くことに気が付いたのだ。
会えない日などは苦しくて耐えられなかった。まるで恋人のような存在に山ち
ゃんはなって行ったのだ。
しかしこんなことを言うと、男と男だから変態と思われてしまって山ちゃんは
離れて行ってしまうだろうと考えて、言える訳がないじゃないか・・・
今、山ちゃんは俺にチャンスを呉れたんだ。だから俺も気持ちを伝えなくちゃ
• ・・と思ったのだ。今を除いてチャンスは無い。よしんば、それに失敗し
• たとしても、酒の上の笑い話で済んでしまうだろう・・・と考えたのだ。
そう考えると、口付けを返していたんだ。

山ちゃんは上を向いて身を反らせたまま眸を閉じて、ジッと身を任せてい
るようだった。身体を密着させると「俺のものが硬くなっているのが、山ち
ゃんに判ってしまう」と思ったが、しかし一方では、「そんなことは構わな
いのではないか」とも思っていたことも事実である。【続く】
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