小説 舞の楽園 ( 私は薫 )
- 2023/09/18
- 23:29
「 薫 」(14)
「でも恥ずかしい・・・」
彼女は大いにテレているが、大将にお礼に行くことには賛成してくれた。・・・
と言うよりむしろ、お礼に行かねばと思っているようであった。
焚き付けてくれた大将には、俺達が結ばれたことを報告しに行くことを・・・
この年になって恥ずかしがるとは・・・初心なんだなと思って俺は、今更ながら
可愛いと思っていた。
「お風呂を沸かして来ますね・・・」
このままここで、汚れた身体を愛撫されているだけではいけないと彼女は思った
のであろう、抱き締められて背中を撫ぜられていた手を優しく外して、躯を起した。
「うん。一緒に入ろうよ」
俺は言って起き上がり、彼女は俺の為に灰皿を用意してくれてから浴室に消えて
いる。
彼女はお湯を入れながら浴室を綺麗にしていると見えて、なかなか出てこない。
浴室からは水を流す音が聞こえていた。
俺のためにだけ、灰皿を用意してくれたのだと思うと、俺は感謝しながら煙草に
火を付けていた。
「お風呂が沸きましたわよ」
山ちゃんの女声が聞こえて来た。もう彼女はすっかりと女になっているようだ。
いい女を手に入れたものだと思いながら吸っていた煙草の火を、彼女が用意し
てくれた灰皿に押付けて俺は浴室の方へ歩み出していた。
俺が浴室へ行くと浴室は綺麗に磨き上げられており、山ちゃんが俺と入れ替
えに浴室から出て何かごそごそやっている。何をしているのかと思っていると、
真新しいタオルとバスタオルを用意しているではないか・・・
新しいタオルでなくとも良いと思ったが、山ちゃんは今日の記念にと考えて
用意してくれたものだと思って、黙って受け取っている。
浴室を綺麗にしてくれたことも、新しいタオルを用意してくれたことも、俺は
感謝感激だ。
浴室は大の男2人が入るには、いや違った大人の男と女2人が入るにはだ・・
ちょっと狭いが、入れないことはない。
「座りなよ。洗ってやるよ!」
ひっそりと女らしく立膝をして掛り湯をしている山ちゃんに言っていた。
俺は白い躯の彼女を素手で洗ってやりたくなったんだ。俺が山ちゃんを大切に
思っているこの気持ちを彼女も解ってくれたのだと思う。「ハイ」と小首を傾
げて恥じらいながら素直に頷いている。
彼女の白い裸身を素手で撫でるように洗ってやっていると、また、興奮して
しがみ付いて来ている。
どうしてそんなに興奮しているのか解らなかったが、俺に身体を開発されて
一気に噴出したものかも知れない。それと、大将と奥さんの仲の良さに触発さ
れたのかも・・・と考えて、俺はニヤリとしてしまった。
山ちゃんは丸裸で俺に抱きついてから何か考えているようだった。少し興奮
が収まって来たのか、何か言いたそうな気配である。
「山ちゃん。何を考えているんだい?言いたいことがあるんじゃないのかい?」
【続く】
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