小説 舞の楽園 ( 私は薫 )
- 2023/09/19
- 22:30
「 薫 」(15)
彼女はハッと我に返ったようであった。そしてパッと朱くなった。それからオ
ズオズと言った。
「これからは・・・2人だけのときは・・・薫と言う名前で呼んで欲しいの」
彼女が考えていたことは、名前だったのだ。
彼女は姓が「山路」で名が「薫」だから、女に相応しい名前を考えていたとみ
える。
彼女は小さい頃は両親から「薫」と呼ばれていたと言う。
けれども、山ちゃんはこの「薫」という名前が女みたいで大嫌いであったそう
である。「しかし、俺の女になった今は『薫』と呼んで欲しいと思っているの
です」と言うのだ。
5月の山道を歩いていると新緑の香がしてなんとも言えない晴れ晴れしい
気持ちにさせる「薫」と言う名はとっても良い名前であると思ったが、山ち
ゃんは「青春時代に『カオルちゃん遅くなってごめんネ』と言う流行歌が
流行って、お前の名前は女の名前だ・・・と友達から苛められた記憶がある。
だから、薫と言う名前は嫌だったが、あなたに抱かれて変ったの・・・」と
言っている。
「薫と呼び捨てにして欲しいのよ・・・」とも言っていた。
希望通りに薫と呼んでやろうと思った。
薫はこうしていると、言葉までも女らしくなって来た。
<俺の女・薫>
俺は今まで山ちゃんと親しみを込めて呼んでいたが、初めて『薫』と優しく
呼んでやった。使い馴れると良い名前だ・・・と思っている。
「ハイ・・・」
彼女は非常に嬉しそうにニッコリと笑って返事を返している。
俺に抱かれて、女の気持ちになっているところを、このように呼ばれるとます
ます気持ちは女になって行くらしい・・・・。
「薫」
また呼んでやった。
薫と呼ぶと、彼女のものが元気になって来るのが判る。彼女も興奮して来る
らしい。
そんな薫の可愛らしい一物を取ってしまおうなどとは、俺は考えていない。
興奮して来ると起立する彼女のものを、興奮しているかどうか判るから・・
と考えていた。
彼女はまた何かを思いついたようである。
「今度はどんなことを考えているんだい?」
「わたし。自分のことを何て呼べばいいのかなって考えていたんです」
俺が聞くと、彼女は又。恥ずかしそうに答えている。
「そうだな・・わたしでもいいが、2人だけの時は「あたし」と言ってくれな
いかな・・・」
俺が言うとニッコリと微笑んで「あたしって言うわ・・・!」と、言ってくれ
たのだ。俺はおんなは可愛く「あたし」と言うのが好きなんだ。
「その代りにあなたは「私」を止めにして「俺」にして欲しいの・・・」
と、言う。【続く】
小さい文字
スポンサーサイト