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小説 舞の楽園  (私の心と肉体 ) <第2部>

   
       私の心と肉体( 第二部 )-11
 「いやあ~」
ロングドレスですがスリットが腰まで切れ込んだスカートは見事に捲くれてしまいまし
た。私の下腹部はまたまたお客様の目に触れてしまったのです。私は甲高い悲鳴を上げ
ました。
「オッ・・・」
「さっきは良く見えなかったが、今度は見えたぜ!」
私は恥ずかしさの余りに、泣き出してしまったのです。ママさんが広子さんと朋美さん
を嗜めていました。
大慌てでドレスの裾を直して、ママさんの影に隠れたのです。けれども露出の快感を知
っている私にはそのことも、嫌ではなかったのです。
 今夜のお客様は皆様紳士ばかりで露出過多の私を敬遠したのか、それ以上は恥ずかし
い思いもせずに過ごすことが出来ました。
ママさんや朋美さんや広子さんに教えて貰って水割りを作ったり、紹介されてヘルプを
したり、オシボリを替えたりして大変でした。
「綺麗な娘だね。本当に女性じゃないの・・・?」
お客様は私を誉めて呉れています。
私は年がいも無く「このまま水商売をして行けるのではないかしら・・・」と思った1
日です。チョッピリですが、私の容姿に自信を持った夜でした。

 お店がはねた後(終わったと言う意味です。私も水商売ですから・・・)カウンター
やボックス席、トイレの清掃をして2時すぎです。
タクシーでママさんのマンションへ連れて行って貰いました。
「さあ・・・入って・・・。2部屋あるから、当分の間ここを使うといいわ・・・」
鍵を開けたママさんは親切に言ってくれます。
「はい、ありがとうございます。ママさんには何から何まで・・・本当に感謝しており
ますことよ。ママさん。ありがとうございます」
私はフロアーに正座をして頭を下げていました。
『このママさんの言うことならば、どのようなことでも聞こう・・・』と思いました。
困っている私を助けて下さった恩人なのです。
この身の振り方もママさんの親切で決まって、安堵しました。
その夜は健次様のことを考える暇も無く、グッスリと眠ったのです。
私は悲しんでばかりは居られないのです。


   < 4 >
それから8日後の日曜日、私はママさんのマンションに身1つで引越しをしました。
健次様との想い出がイッパイ詰まった鏡張りのお部屋ですが、ご主人様を亡くした今と
なっては、想い出ばかりが先行して、私はいたたまれないのです。
時々、可愛がって頂いた私の肉体が疼くのですが、オナニーすらする気になれません。
あの優しかった健治様の想い出のお部屋はそのままにして、自分の少しばかりのお洋
服と他人には見せることの出来ないSMの責め具の入った箱を持ち出したのです。
私は健治様の想い出を断ち切って残りの人生を強く生きようと考えておりました。
それが、ご主人様のご意志だと考えたのです。

 あっ、その前々日に健治様のお兄様の事務所を訪れました。
お兄様はお父様と一緒に農産物の加工会社を経営なさっているそうです。自宅の近く
に事務所を構えていまして、そこの社長さんだとのことです。
名刺を頂いておりましたのでそのことは承知しておりました。
このお部屋を出て行く前に、どうしてもお話をしておかなければ無らないことを思い
付いたのです。(続く)
   
       私の心と肉体( 第二部 )-12
  このお部屋は健次様が親戚の不動産屋さんを通して借りて貰ったお部屋と言うこと
しか、私は聞いてはいなかったのです。
健治様の遺品の中を調べさせて貰いましたが、契約書すら残ってはいませんでした。
このお部屋を退去するときには、お部屋の中の改造した部分は綺麗に直して元通りにし
てお返ししなければならないことぐらいは、幾ら無知な私でも判ります。
「先日お約束をしました通り、明後日アパートを引き払うことにいたしました。つきま
しては、・・・真に厚かましいとは思いますが1つお願いがございます」
お兄様の事務所は行きまして、私は切り出したのです。
「あの改造したアパートを元の通りに修復したいと思いますが、私は無一文でございま
す。アパートの改造費用を1時立て替えては頂けませんでしょうか・・・」と・・・
私の退職金も少しばかりはあったのですが、このようなことになるとは思いませんで
実家の方に送ってしまったのです。
それで・・・退職金は無くなってしまいました。
「本当に厚かましいお願いで恐縮なのですが・・改修費用は私が働いて必ず返済いたし
ますので、お願いいたします」
健次様ソックリな社長さんの前で、私は頭を下げました。

 「『あのアパートは最初は所長さんのために家電会社の名義で借りたものだ』と健次
は言っていました。けれども途中から健次の名義に変更しているのです。私がその時
の保証人です」
「改装は健次が勝手にやったものですね・・・」
社長のお兄様は話し始めました。
「いいのですよ・貴女こそそんな心配をなさらなくっても・・・」
応接ソファーに浅く腰を降ろしたお兄様は優しく笑顔で言っております。弟さんを亡く
して悲しいのでしょうが、そのような態度などちっとも見せずに、私を女として扱って
くれるのです。
「これは親父とも相談したのですが、むしろ貴女は健次の被害者だと思います。健次の
生命保険と会社からの退職金、それから慰労金で幾らかの金がおりるのです。むしろ
貴女にお支払をしなくてはならないと思っております・・・」
「いえ、そ、そんな・・・わたくしが被害者だなんて・・・考えたこともございません
わ。わたくしが手術をしてこのような肉体になったのも、ご主人様を愛してしまった
からですのよ。わたくしの責任だと思っていますのよ・・・」
前回は涙に暮れてしまったので、お兄様にお会いする今回は決して涙を見せまいと私は
決心しておりましたのに、お兄様の優しい言葉に思わず顔を覆ってしまいました。
「兎も角、あの部屋の改修費用はこちらで出させてください・・・」
「それに・・・僅かばかりですが、貴女の人生を作り直すお手伝いとして・・・幾らか
を受け取って頂きたいのです」
「そんな・・・積りでこちらさんに来た訳ではありません」と固辞をする私ですが、お
兄様は聞いてはくれませんでした。
私は一子になってからは預金などしたことがありませんでしたので、小沼一夫の時代に
使っていた唯一の預金の番号をお教えした次第です。(続く)
 

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