fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


         「 薫 」(23)
「良かったね・・・」
俺達が店に入って行くと俺が何にも言う前に、ニコニコして大将は俺にと言う
よりも薫に向って声を掛けていた。
「はい・・・」
薫は恥ずかしくて仕方が無いけれども一方では非常に嬉しそうに頷いて、下を
向いて真っ赤になっている。きっと60歳を過ぎた男が、女としてスタートを
切ったことが、恥ずかしいことの原因であろうと俺は思った。
大将は何もかもお見通しじゃなかったのかな?ひょっとすると、夕べの俺と薫
のSEXのことも知っているのじゃないかと考えてしまって、俺まで紅くなって
いたようだ。

  <千寿さんと・・・>
 「良かったネ・・・」
大将はニコニコしながら私達に言っております。大将の笑顔は「何でも知って
いるよ・・・」と言っているようです。夕べのSEXのことも知られてしまっ
ているのではないかと私は考えて赤くなってしまいました。
彼もそれを思い出したのでしょうか、紅くなっていました。

 私は大将にお会いしたら、言いたいことがありました。これは、夕べから考
えていたことです。
けれども、今ちゃんに犯された夕べからは私は女になっています。女になった
ことは大将も見通していると思われますが、大将とその他の人に対して昨日
までは男で、男言葉で話していましたので、女言葉を使ってお話することが
とても恥ずかしくてなりません。
私がモジモジとしておりますと、彼が「薫」と声を掛けてくれたのです。
彼には私が大将に何を言いたいのか話してはいないのですが、私が何かを話し
たいのだと思ったようなのです。夫婦のような機敏が判ったのだと思うと嬉し
くなってしまいました。
彼が私に声を掛けてくれたことで、私は決心が付いたのです。

 「わたくし。奥様にお願いしたいことがございますのよ。それで・・・ご
主人様がいらっしゃらない時間にも、ちょくちょくご自宅の方へ・・・お邪
魔させていただけませんかしら・・・」
自然と丁寧な女言葉で、考えていたことを申しておりました。
「ご丁寧なご挨拶を頂き恐れ入りやす。ちょくちょくとは言わずに毎日でも
家の奴に会ってやって下さい。あ奴は友達もいないので、薫さんとも年が近
いから何かとお話が出来るでしょう・・・」
大将も私が丁寧な女の言葉で言ったので吃驚して焦ってしまったようです。
改まった口調で頭を下げていました。そして、そう言って直ぐに家の方に電
話を掛けてくれたのです。
その奥様への電話はやはり一方的なものでした。
「今から山ちゃんが家の方へ行くから、待っていなさい!」・・・・と、申す
一言でした。
大将が私達の前では恥ずかしがってそう言う言い方をしているのではなくて、
いつもこう言う言い方をしていることが、私は知っております。彼の狼狽が
可笑しくってクスリと笑ってしまいました。【続く】
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!